第百九十三話 助ける方法
水のマナ……?
それを運んで、一体どうしろと……。
「マナティクス様の身体に持っていけば、ある程度痛みは和らげられるわ。
要するに、篭っている熱を冷ます、って事ね。……最終的な結果は変わらないけれども、やってくれるかしら?」
ウンディーネはこちらを問いかけるような横目で見る。
だが、それに対しての返答は既に私の中で決まっていた。
あのマナティクスが、サラマンダーを助けようと体を張ってくれているのだ。
「もちろん、助けたいです! ウンディーネ、私は何をすれば良いですか⁉︎」
私がそう叫んで問うと、ウンディーネは私がそう答えると分かっていたのか、優しく笑みを浮かべて。
「……分かったわ。じゃあ改めて言うけれど、私のマナは水の力を持っているのよ。今まで使っていなかったのは……まあ、訳あってと言う事で今は勘弁してちょうだい。
それで……水のマナを使えば、マナティクス様を苦しめる熱を取り除くこともできる。でも、私だけの力じゃマナを全てあの方に届ける事は出来ない」
そこで……私の力が使われるという事か。……『機械仕掛けの神』……私の体内のマナを自在に操作する力……
「……私の『機械仕掛けの神』を使えば、マナティクスへマナを送れる……という事ですか?」
「その通りよ。だからまあ……私のマナを貴方の体内に送る事になるわね……」
ウンディーネは、少し気まずそうに目を逸らして言う。
……それって……
「私の体内に一度ウンディーネが入る必要がありますよね……?」
私がそう言うと、ウンディーネは硬直して、青い肌とは対照的に頬を紅潮させる。分かっていた筈なのに、まるで言うことさえ不味かったかの様な……。
「……っ、そ、その……私は別に良いけども……貴方は大丈夫なの……?
第一身体に異物を入れるって言うのが……」
……? 何をそこまで緊張しているのだろう……?
不思議ではあるが、ウンディーネは声を上擦らせて珍しくもじもじとしている。
だが……ウンディーネが何かに抵抗を抱いているのは確かだろう。
私の返答を待っている、だったら。
「何をそこまで緊張しているんですか……? ウンディーネ、私はサツキを助けたい気持ちも有りますが、目の前に苦しんでいる人がいたら助けたい、と言う気持ちも有ります。
マナティクスの苦しみを和らげられるなら、私はどんな危険なことだって辞しません」
ウンディーネをはっきりと見据え、私は何かに渋るウンディーネに自分の言いたい事を伝えた。
「危険な事って……それはまあある意味危険でしょうけど……待って、もしかして貴方それ本気で言っている?」
「本気……? はい、多少苦しむ事になっても私は努力しますよ?」
ウンディーネの言う意味がよくわからず、私は宙に浮く様な返答をする。
「……さっきまでの自分が恥ずかしくなってきたわ。そうね……こんなところで一々渋っていても意味がないわね。始めましょう」
ウンディーネは一つ咳払いをし、マナティクスの方へと身体を向ける。
「あの……さっき恥ずかしがっていたのって、一体……」
「忘れて」