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第百九十二話 地獄

「そんな……! マナティクス、やめて下さい! いくら神様でも、こんな状態が続いたら死んでしまいます!」


 私は依然赤い光に包まれているマナティクスに必死に呼びかけた。


 マナティクスは、私の声を聞くと少し目を開けるが、鬱陶しそうにこちらを睨み。


「黙っていろ! ぐっ……少々堪えはするが、私は死にはしない……!」


 こちらへ、そう言っただけでマナティクスは再び目蓋を落とした。


 死にはしないなんて……絶対では無いのに何故そんなふうに断言を……⁉︎

 燃やされているのに、無事な筈がない。多少抵抗されても、何とかして止めるしか___


「疑っている顔、しているわね」


 そんな時、唐突にウンディーネがこちらの方を向いて、そう洩らす。


 焦る様な表情も見せずに、彼女はいつもと同じ様な飄々とした表情をしていた。


 目の前でマナティクスが燃やされている事が分かっているはずなのに、どうしてそんなにも悠々としていられるんだ……⁉︎


「う、ウンディーネ! 早くしないとマナティクスが焼け死んでしまいますよ! あなただって、彼女には死んで欲しくない筈です!」


 私はウンディーネに向かって慌てて捲し立てる様に言う。

 

 しかし、ウンディーネはまだ慌てず、私が言葉を言い終わったと同時にマナティクスの方を再びじっくりと見て。


「……私も、死んで欲しくはないわね」


「そうでしょう⁉︎ だったらウンディーネ、やるしか___」


「でも、マナティクス様は死なないのよ。と言うか、死ねない……の方が正しいかしらね?」


 私の言葉を最後まで聞かずに、ウンディーネはポツリと、あり得ない事を当たり前の様に呟く。


「……死ねないって……どういう事ですか……?」


 先程、ウンディーネは言っていた、炎のマナは神だけを焼くと。


 だったら、むしろ焼け死なないことの方がおかしい。

 何故、神にしか効か無い物なのに、死なないと言い切れるんだ……?


「……ややこしいでしょうけどね、マナティクス様は今、身体半分がこの地上の物になっているのよ。

 私達と同じ様な感じ、と思えば良いかしらね……」


 身体半分が……という事は、燃やされているのは半身だけ……ということか?


「身体が残っていればマナティクス様は再生出来るし、決して燃やし尽くされることなんてない。

 だから、それを分かっていてあの方は承諾したのよ」


 ウンディーネは悔しげな表情を浮かべてマナティクスを直視する。


 そんな……死ななくても、それって……


「それって……ずっと燃やされ続けるってことですか……? 意識を失うことも許されずに、ただサラマンダーを直すための身体が練り上げられるまでずっと……」


 私がそう問うと、ウンディーネは少し間を置いて頷いた。


 ……そんな状態、地獄以外の何者でもない。

 サラマンダーを治してくれるのは、嬉しい。でも……


「でも、どうにかする事は出来ないんですか……⁉︎ 何か、痛みを和らげる様な方法とか……」


「……もちろん、今からやるつもりよ。フレイ、私の水のマナをマナティクス様に届けて欲しいの」

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