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第百九十話 思いの先

 マナティクスがそう言うと、横にいたヴィリアもそれに応じて手から赤く燃え上がる炎を出した。


 サラマンダーは私の手に握られたまま、それに見惚れているのか沈黙する。


「……! あ、いけないいけない。マナティクス様、よろしくお願いします」


 そう言って、若干慌てながらもサラマンダーは準備が出来ているようだった。


「……」


 マナティクスはコクリと一度頷くと、サラマンダーを受け取るためかこちらへ手を伸ばす。


 私も、サラマンダーをマナティクスの手のひらへと近づけていった。


 ゆっくりと、決して落とさないように、一瞬一瞬を噛み締めるようにして……。


 そうしてマナティクスの掌の上に、私の握り拳が重なる。

 それと同時に、マナティクスの手から出る光を拳の下から当てられ、私の手の甲が陰った。


 ……この手で、治すのか。先程のあの方法……自分自身の目で見ていても何が起こったのか全くわからなかった。


 そんなことを考えながら、私は握り拳を解いて拳の内に持っていたサラマンダーをマナティクスの手へと落とす。


「……改めて私からも、お願いします。サツキを助けたいんです。……それに、サラマンダーの元気に飛び回る姿もまた見たいですから……」


 私は少し不安になってしまい、マナティクスに念を押すように言ってしまった。

 

 ウンディーネが復活したんだから、サラマンダーだって簡単に蘇るはず。

 頭ではわかり切っていることだ。


 しかし、分かってはいても、どうしても、念を押さずにはいられなかった。

 もしサラマンダーが何かの手違いで壊れてしまったら……想像したく無くても、想像してしまうのだ。


 少しムッとされても仕方ないと思って、私は怯んで目を伏せた。

 

 しかし、マナティクスは私の言葉を聞いた瞬間、少し驚いたように目を開かせた後に、再び穏やかな表情になって。


「……良いだろう。この精霊、確実に精巧に直して見せる」


 そう言って、手のひらに置かれていたサラマンダーをぎゅっと握りしめた。


「……」


 私は予想外のことに目をぱちくりさせながら、受け取ってもらった後にどうとすることもなく、ただそこに直立するばかりだった。


 ……まさか、あのマナティクスがあんな返事を返すとは……以前彼女自身が言っていたが、地上にいるためか? それとも、子供とも言えるような精霊の為にやるからか……?


 ……いや、それだけでは無かった。そのどちらでも無い、他の誰かに向けて言っていた様な……。


「フレイ、少し下がれ。炎のマナだから先ほどよりも少し危ないぞ」


 ヴィリアにそう言われてわたしはすぐ近くで直立していたことに気づき、さっと身を引いた。

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