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第百八十七話 懐の中には

「オルゲウス……そうか、ここはオルゲウスなのか……いや、だったらどうして俺はこんな所に……?」


 イツはブツブツと顎に手を当てて思案顔をする。

 

 何か引っかかる部分でもあったのだろうか……? どちらにせよ不自然すぎる。


 ここはそう簡単に来られる場所ではないし、間違ってくるなんて考えられない事……。


「……どうした、始めないのか?」


「え? あ、ああ……すみません。早く始めないといけませんね」


 ヴィリアに声をかけられ、私は少し慌てるように返事をする。


 そうだ。今いくら考えてもどうすることもできないのだ。

 とにかく、ウンディーネにサラマンダー。二人の治療をしなくては……。


「……では、マナティクス、ヴィリア。よろしくお願いします。まずはサラマンダーから……」


 私は二人の方へ身体を戻し、懐に手を伸ばすがそこでハタと動きを止めた。



 ……サラマンダーって、あの宿の中においたままじゃなかったか?

 

 私がふらっと出かける程度のつもりで出て行った時に、あそこに置いたままで……。


 ……困った。非常に困った。

 今から迎えに行ったとして、サラマンダーは直ぐにこちらへきてくれるだろうか。


 私と同じくらい沈んでいたはずなのに、そこへいきなりやって来て、サラマンダーは納得してくれるのか……?


 どうにかして、しっかりと話をつけないと……


「……どうしたのよ。出すならさっさと出しなさいよ……」


 唐突に、懐の中から声が聞こえてくる。

 その声は若干拗ねているようで、気恥ずかしい様な雰囲気だった。


 だが、それよりもだ。この声は……

 

「まさか……⁉︎」


 私は目を見開いて驚くも、直ぐさま懐の中に手を突っ込んだ。

 懐の中に入った瞬間に、私の手に硬いものが握られる。


 長く、筒状のそれを引っ張り出すと、そこには。


「サラマンダー……⁉︎ い、いつからそこに……⁉︎」


 鞘に納められてはいる物の、私が握る柄に刻まれた炎の如き刻印を持つ刀。

 間違いなく、サラマンダーだった。


「……なによ、まさかさっきまで気付いていなかったってわけ?」


 サラマンダーは訝しむ様な探る言動をする。


 私が何のことだかと首を傾げると、サラマンダーは恥ずかしそうに唸りながら。


「……はぁ、失敗したわ。てっきり気づかれている物だと思っていたのに……。

 ……まあ良いわ、それで、いつから私があんたの懐にいたか……だっけ?」


 ため息をついて半ば諦める様に呟くと、サラマンダーはすぐさま話題を変えた。

 

「は、はい。サラマンダーは今動けませんし、一体どうやって入ったかと言うところも合わせて聞きたいのですが……」


「偶然よ、偶然。

 あんたが宿を出て行くときに何かにぶつかって、その拍子に上にいた私までドミノみたいに落ちて行っちゃったのよ。それで、気付いたら懐に……」


 ……そんな偶然あるのか。

 サラマンダーが黙っていたことも気にはなるが……。


「ま、事の成り行きは分かるわ。フレイ、あんたがどうにかしたいって言うんなら、私だって手伝ってあげる。みんなで力を合わせて、サツキを助けましょ」


「サラマンダー……!」


 ……良かった。これでサラマンダーもウンディーネも、完全に治る!

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