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第百八十六話 イツ

*


「なんだ、もう帰ってきたのか?」


 洞穴へ戻ってきた私たちの姿を目にし、マナティクスはそう言った。

 だが、こちらに視線を少し寄越しただけで、言った言葉も特に興味があるような言い方ではない。


 ……まあ、通常運転と言うだけだ。


「マナティクス、すぐにサラマンダーとウンディーネの治療ができるように準備しいただけませんか?

 その間にひとまず私は持ってきた果実を彼に……あれ?」


 そう言いながら私はイツが寝そべっていた机の方を見るも、そこには彼はいなかった。

 代わりに聞こえてきたのは、その机の下から聞こえてくる唸り声。


 視線を落とすと、そこにはうずくまって倒れているイツが居た。


「う……うぅ……」


「え……⁉︎ イツ、何やっているんですか⁉︎」


 すぐさま駆け寄り、私は彼へ呼びかける。

 起き上がったときには、特に何もなかったはず……。


「あ……? 何で俺の名前を知って……って、お前、もしかしてフレイか? ったく。って事はここはまだあのバケモン共の巣窟ってことか? あの野郎騙したのか……」


 イツは私の顔を一瞬見るも、何かをぶつぶつと呟き出して再びこちらへの視線を外してしまう。

 

「イツ! 何があったのか言ってください!」


 私がそう叫ぶと、イツはビクッと身体を震わせてたじろぎ気味に。


「お、おう……俺はただここから降りようとしただけだぜ。そしたらいきなり地面に足つけた瞬間にすげえ痛みが走って……」


 痛み……? 骨折でもしているのか……? まあ、ボロボロの状態だったのだから、それも……。


 いや、それよりもだ。どちらにせよ、彼には安静にしていて貰わないといけない。


「……ひとまず、あまり動かないで下さい。自分でもわかっているとは思いますが、とても動けるような状態ではありませんよ」


 そう言いながら、私は『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』でイツを持ち上げて机の上に下ろす。


「うぉっ……何だこれ? お前が操ってんのか?」


 果実も同時に横に置くと、イツは驚いたような仕草で『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』に触れようとする。


 しかし、触れる直前にかき消え、イツの右手は空気を撫で付ける事になった。


「……では、マナティクス。サラマンダー……そして、ウンディーネを直してもらう準備は……」


「準備も何もあるか。小娘、貴様が良ければすぐにでも出来るぞ」


 マナティクスは私の横に立つヴィリアへ顔を向ける。

 

 それに対してヴィリアもマナティクスに目を合わせ、はっきりと見定めながらその首を縦に一度振った。


「……良いだろう、すぐにでもやるぞ」


「ちょ、ちょっと待ってくれ! あんたらの話に水を指すようで悪いんだが、俺今混乱気味でよ……

 フレイ、一つだけ質問させてくれ。ここは……どこなんだ」


 まるでここにくる気は元々なかったかのような質問だ。

 

 そもそも海にモンスターが居るのにどうやってイツはここに……? ……考えても仕方がないか。


「ここは女神が祀られる島、マナの溢れる火山の地。オルゲウス、ですよ」

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