第百八十五話 七聖霊
「……そう言えば……ヴィリアの言っていた『七聖霊』、とは何なのですか?
スキルの類……でしょうか?」
「ああ、私の『七聖霊』はスキルだ。炎、水、風、土、氷、雷、光……計七つの力を操る能力だから、『七聖霊』」
七つの力……。
さも当たり前のようにいうが、単純に考えて七人分の力を持っている事になる。
それにそれを状況に応じて入れ替わり立ち替わり使えると考えれば……かなり恐ろしい物だ。
しかし、そこで私の頭の中にふと疑問が浮かんだ。
ヴィリアは私と相対したときもモンスターと戦った時も三つしか使っていなかったはず……
それも、炎、水、風の三つだけだった。
……何故だ……?
「あの……何で力を三つしか使っていなかったんですか? 全力で戦うなら七つ全部使えば良いと思うのですが……」
あの時には完全に敵対していたわけで、ヴィリア自身も本気で私のことを殺そうとしていた。
それに、彼女が手を抜くとは到底思えない。
例え侮っていたとしても……きっと私のことを完膚なきまでに叩きのめしていただろう。
「ああ……それは……他のものを使いこなせていない、と言うか……」
ヴィリアはバツが悪そうに顔をしかめてどもり気味に呟く。
つまり、三つしか満足して使えない……?
生まれつきのスキルでそこまで差異が生じるか……⁉︎ 刀に宿していたあの龍のようなエネルギーだって鍛えているからこそ出ているはずだ。
「いや、実は生まれてからずっと七つあったと言うわけでは無くてな。
成長するに連れて一つずつ増えて行ったんだ」
一つずつ……成長と一緒に使える力も増して行って今では七つ……?
「じゃ、じゃあどうして残り四つを鍛えていないんですか? もっと強化しても良いんじゃ……」
「そんなに必要な時期があってたまるか。たまに怪しい奴を退ける程度なら三つ力を使えれば十分だろう」
ヴィリアは呆れたように言う。
彼女の言葉に私の脳裏で『機械仕掛けの神』が焼き捨てられる姿がよぎった。
「……でも、それでも鍛錬を続けていればもっと強い力を手に入れられるのではないのですか?」
私が気を伺うように聞くと、ヴィリアは呆れた顔から、今度はまるで引くような顔へと変化して行き。
「お前は私を戦闘狂か何かだと思っているのか? 私だって金を稼ぐし、暮らしがある。最近は色々あって仕事はしていないが、貯めた貯金を切り崩して暮らしているんだ……」
……言われてみればその通りだ。
ただ全力で目標を目指して後先考えず走り続けている私たちと違ってヴィリアはもともとここで暮らしているのだ。
心の持ちようだって違うところがあるのだろう。
……まあ、それでもヴィリアは手を貸してくれると言っているのだ。
時間もあまりない。マナティクスに早く協力してもらわなければ。