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第百八十四話 後始末

「……え?」


 唐突の出来事に、私の思考は停止する。

 目の前には起き上がった赤髪の男、まだ目覚めないと思っていたが……


 私はハッとし、数秒石のように体が固まっていた事に気がつく。

 この声……疑ってはいたが、間違いない。彼は……イツだ。


 以前、私がサンフォードの国王、コウキによって拐われてしまった時にサツキとともに私を助け出してくれた事がある。


 だが、色々とあって私が彼と最後にあったのはあいにくと拐われるよりも前となってしまったのだ。

 ……いや、実際は意識がない状態で戦っていたわけだから身体の方は会っていたのかもしれない。


 ともかく彼は、私を助けてくれた仲間であり、恩人だ。今更ながらに助ける事ができて良かった……。


 安堵に駆られ、私はほっと息をつく。

 だがそう余韻に浸ってもいられない。ディオトルが死んでいないとはいえ放っておけば危ないのだ。


「イレティナ、申し訳ないのですがもう一度森へ行って栄養になるようなものをとってきてはくれませんか?

 果実以外の食物も必要になってくると思いますので……」


 イレティナの方へ向き、私は軽く彼女に頼む。

 イレティナは不敵な笑みを浮かべ、頷くと。


「オッケー! 肉付きがいいのを取ってくるよ!」

 

 親指を立て、そう言い残すとすぐに出て行ってしまった。

 

 まあ、イレティナがあそこまでやる気ならきっといい具合に食料は確保してくれるだろう。



 ……今、肉付きがなんだとか言っていたような……


「……それで、私達はどうするんだ? あいつが行ったんだ、ここでグズグズもしていられない」


 私がディオトルを机の上に上げていると、ヴィリアが問いかけてきた。

 洞穴の外を親指で指し、焦ったげにその方向へ顔を向ける。


「もちろん。先程イレティナが外に置いてきた果実があります。鳥にとられてしまう前に、早く回収してしまいましょう」


*


「……なあ、気になってはいたんだが、お前の仲間の、イレティナ……だったか。

 一体何者なんだ? 明らかに野生慣れしてるし普通とは、思えないぞ……」


 十数キロはくだらないのではないのかという量の果実を見ながら、ヴィリアは言う。

 籠状にした『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』に果実を積んでいくさなか、私は腰を落として。


「……私も、イレティナが山で暮らしていたと言うことと、特殊な部族にいたと言うこと、それと彼女の過去。

 それくらいしか知らないんですよね。何というか、身体能力は野生動物そのものと言います、っか……」


 両手いっぱいに大小様々な果実を抱え、私は籠に落としていく。

 ヴィリアは若干イレティナの事に引くような表情さえして、持ち上げていた手が空中で止まっていた。


 何か、イレティナを危険だと思ったのだろうか。


「……でも、彼女は部族の中でも一番心優しい存在でした。

 ……私がどうと言える立場ではないんですけどね、はは……」


 果実を籠に積む時間が、しばらく続いた。

 そんな時、ヴィリアが唐突に口を開き。


「……まあ、あいつは大して悪い奴ではない……とは思う。危険な力なんてのも無さそうだしな」


 彼女の言葉に、族長とイレティナの戦う姿が脳裏をよぎった。

 ……決してイレティナが危険というわけではないが、伝えなくてもいいだろう。

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