第百七十四話 血液
「その……変える、となるとどの様にするのですか?やっぱり、マナを血液に変化するとか……」
「まさか! そんな錬金術の様な芸当、儂には出来ませぬ」
ディオトルは冗談と思ったのか、驚き半分で笑って訂正する。
……だが、改めて考えれば確かに別の物から同質量のものを作るなんてのもおかしな話だ。
「では……どの様にして彼の回復を……?」
私が問うと、ディオトルは少し間を置いた後にため息をつく。
まるで、何かをためらう様に。私はディオトルの背に少し迷いがある様に感じた。
しかしそんな風に感じる気の迷いもかき消す様にディオトルは再び男の身体に赤い光を浴びせる。
「……」
数分ほど、時間がたった。
男の全身にくまなくマナを充填させたディオトルはひと作業が終わったとばかりに息をつき、満足げに頷く。
……しかし、マナを満たして、どうするつもりなんだ? どれだけマナを満たしても、血液の代わりにはならない。
それに、むしろ先程よりももっと弱っているような気が……
「あ、あの……」
「ん? ああ、そうでしたな。まだフレイ殿にはこれから何をするのか教えておりませんでしたの」
男の容態が気になり、私はディオトルに呼びかけたが彼は何かを早とちりしたのか先ほどの質問の続きを話そうとする。
一瞬訂正しようと思ったが、私の動きはそこではたと止まった。
いや、しかしこれは聴いておくべきことなのではないだろうか。そんな考えが脳裏にふとよぎったのだ。
「儂は転移の魔法が使えますのじゃ。物と物の間を入れ替える……と言っても、片方はマナで無ければ出来ないものでは有りますがの」
ディオトルは続け様に言葉を並べ、解説をする。
それよりも……転移……? それで、マナがある場所に転移ができる……となると先ほど込めたマナは……⁉︎
「まさか、ディオトルさん! あなた……!」
「ええ。儂の血液を……使います」