第百六十九話 目指す場所は
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あれから数十分、私とヴィリアは海岸をずっと歩いていた。
どうしてかも聞けず、私は彼女の後ろをついて行っている。
ただ、彼女は確かに私の仲間を探す、と言っていたのだ。だったら、それはどう言う意味なのだろう……?
……もしかして、サツキを助けに行くために協力してくれるとか?
「……あの、さっき言っていた事って、つまり……協力してくれるって事ですか? サツキを助けることに」
勇気を振り絞っていった言葉だった。
結局のところ、まだヴィリアはサツキと再会もしていない、ならばサツキに対しての考えが変わったと言うのも考えにくいのだ。
そう予測できても言ったのは、それ以外思いつかなかったからだ。もし違っていても、一度聞いておかないと本当かどうかわからない。
ヴィリアは歩きながらこちらへ首を向けると、難しそうな顔をして。
「まあ……結果的にはそうなってしまうかも知れんな。実際、奴を助けることになるのは心底うんざりする。悪名だけは耳にしているからな」
結果的にはそうなってしまう……? つまりサツキを助けること自体は目的では無い、と言うことか?
私がそう考えていると、ヴィリアは続け様に言葉を並べて行く。
「だが……お前は私を助けた。だったらそれに答えるしか無い。
……それに、お前はまるで当たり前のようにあんな真っ直ぐなことを言った。困っている人がいたら助けて当たり前など……こちらが気恥ずかしくなるほどの事をな」
彼女はそう言うと、こちらから視線を外して道の先を向き、愉快そうに鼻で笑った。
……あれは恥ずかしくなるような言葉だったのか。
いや、それよりも、だ。つまりヴィリアは私に力を貸す、と言っている。
ふと、彼女はこちらへ再び顔を向け。
「しかし……お前自身、あの女を助ける気はあるのか? ここまで来て行っても遅いが、お前にその気がなければ私にもどうすることもできない」
と、私を見つめて言う。
ああ……なるほど、さっきまであんな調子だったんだから、ヴィリアに私が気力を喪失してしまっているように思われても仕方がない。
さっき放った一撃で、サツキと一緒にいたときのことも思い出した。
サツキは私が拐われてしまっても、私が病に伏せようとも、その失敗からいつも這い上がってきた。
目の前にある未来を変えるために、今できる最大限の努力をして、最後まで走りきっていたんだ。
私も、未来を変えれると分かった。だから、今の私の答えは___
「もちろん、助けに行きますよ。後先考えずに、出来ることを最大限に使って。
まだ二日もあります。日が落ちる前に王の一人でも脅してやりま___」
「あ、あれ? そこにいるのって……」
私が息巻いてヴィリアに話していると、私たちに向かって驚くような声が遠くから聞こえてきた。
声のする方に目を向けると、そこには。
「フレイちゃん⁉︎ それと……ヴィリア、さん? どうしてここに……?」