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第十六話 港町

「ところで、何故島国まで行くんですか?大陸を行った方が楽なのに……」


 フレイは髪をいじりながら私に聞いてくる。


「理由は二つ、私自身の強化とこの機械について知るため」


 そう言いながら私は先端に棘のついた例の機械を取り出す。


「えっ……!?それってすごく危険ですよね?

 マナを無理やり引き出して鎧を作り出すって……」


「いや、こいつは中々に使える。確かに、今のままじゃ危険なアイテムそのものだ。

 燃費が悪すぎるし、自我も失う。

 でも、ひっくり返せばこいつの欠点はそれだけだ。

 それを取り払えば、フレイにとっての最大の武器になる」


 そう言うと、フレイはその機械を手に取り。


「なるほど……あれ?それだったら機械都市に行った方がいいんじゃないですか?

 機械なんですから……」


「あーダメダメ、あそこは正真正銘の機械。あそこにはマナがないから情報も探れない。

 それに、これはマナとの関わりの方が深いからね」


 そのために、今回行くのがフェアラウスという国。

 マナの起源と呼ばれる場所だ。


「マナ……ですか。確かに精霊島国と呼ばれるあそこなら色々と知れそうですね……

 あ!」


 フレイは唐突に声を上げた。


「ん?どうしたのさ」


「サツキなら探れるんじゃないですか?

 機械都市は無理でも、潤沢なマナがあるあそこなら……」


「なるほど!ちょっと待って……」


 『フェアラウスについての情報を』


 『検索中……獲得不可能』


 ありゃ?


「……ダメみたい」


「えぇ!?さっきから情報全然取得できないじゃないですか!

 何が万物理解ですかこの詐欺師!」


「さっ詐欺師ちゃうわ!あと故人のものを貶すのはやめよう!」


 しかし……エラーって言うからには何かしらの理由があるんだろう……。

 ウイルスか?いやいや、パソコンじゃあるまいし。

 情報に問題があるとかかな……?


「とにかく、行ってみるしかないってことだね!」







 それから25時間後。


 私達はついにアクセムの港町まで辿り着いた。


「ほー……綺麗な海だ」


「サツキ!鳥がそこら中にいますよ!」


 馬車を降り、辺りを見回すと停泊しているクルーザーや漁船が見える。

 魚の匂いや潮の香り、カモメのような鳴き声も聞こえてくる。


 すると、漁師らしき人が船から1mはある魚を担いで運んでいた。


「海鮮かぁ……」


「駄目ですよサツキ、節約しないと……」


 フレイのその言葉に、私はニヤリと口を上げ。


「金ならある!」


 空間に穴を開け、そこから金の延べ棒を一個取り出した。




「美味い!美味い!」


 私は久しぶりとなる豪華な食事を前に、どんどんと平らげていく。


「よくそんなに食べられますね……。

 刺身なんて一体何皿食べたか……」


 私は透明な液体に刺身を浸し、そして口へと運ぶ。

 生魚特有の脂の感じ、それにマッチするこのよくわからん調味料、たまらん……!


 ポン酢みたいな醤油みたいな……美味いからいいか。


 異世界に海老はあった!

 殻がまどろっこしかったのでいい剥き方をマナに聞いてみる。

 ここに指を引っ掛けて……


「とりゃっ!」


 殻が指に引っ張られずるっと剥ける。


「サツキすごいですね……セマガリをそこまで簡単に向くなんて……」


 私は身の先端から口に入れ、一気にかぶりつき海老一匹を一口で食べた。


「まだまだ食うぞー!店員さん!これをもう10皿!」


「いい加減にして下さーい!」





「うう……もう食えん……」


 私はお腹をさすりながら歩く。


「だから腹八分目までで終わらせておくよう言ったじゃないですか!

 大丈夫ですか?転びそうだったら支えますから……」


 フレイがそう言うと同時に、私は地面の石に足を取られてしまう。


「あっ」


 その時、何かが私の体を支える。


「お嬢さんお怪我はありませんか?」


 上を見ると、金髪の目鼻立ちが整った、いかにもイケメンな男がいた。


「い……いえ……」


「なら良かった。おっと、申し遅れました。私、エルゲと申します」


「はは……私はサツキって言います。助けていただいてどうも……」


「いえいえ、麗しい淑女を助けるのは男の役目ですから……」


 すごく褒める、すごく褒めるぞこの男。


「い、いやー、麗しいだなんてそんな……ははは……」


「では、先を急いでいますので」


「ごきげんよー……」


 私は若干にやけながら手を振っていた。


「……サツキ、やけにニヤニヤしていますね」


「へぁっ!?そ、そんなわけないじゃないか!お世辞だってくらい全然!」


「サツキ、もしかして……男の人に褒められたことないんですか?」


「っ!……ああ、そうだよ、その通りさ」


 現世でも優秀とは言われても綺麗と言われたことは無かった……。

 ギルドでもあんな紳士はいねえべ。

 イツはイツで良いところはあるけれど、仲間って印象だから……。


「……はぁー、良いですか、サツキ」


「……なにさ」


「人に褒められたことが少ないって言うのなら、私がその分賄いますよ。

 ですから、元気出してくださいね?」


 フレイはそっぽを向きながら呟く。


「うぅ……フレイ……」


 私は目を潤ませ、フレイへ抱きつこうとする。


「あなた結構抱きつき癖ありますよね!?

 やめてくださいよ恥ずかしい!」


 フレイは顔を赤らめながら振り払おうとする。


 スラ吉は、海を見つめていた。

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