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第百六十七話 未来を変えたいなら

「まだ居たのか! ぐっ……!」


 しかし、振り返った所で一手遅く、ヴィリアの手の甲を貫いてモンスターの棘が深々と突き刺さっていた。


 棘の先は黒い赤色に染められ、ポタポタと赤い液体が滴り落ちる。


 唖然としてその光景を見ていた私の横へ倒れたバケツから出てきた魚が跳ね回り、その音で私は正気に戻った。


 ……! 早くヴィリアを助けないと……!


 しかし、私やヴィリアがそうして固まっていた間は一瞬の出来事だった。

 私が動き出すよりも前にモンスターは体を捻らせ、彼女ごと連れて行こうとする。


「くっ……!」


「ヴィリアッ……!」


 手を伸ばすが、すでに彼女の体は浮き、あと数秒もあれば海中に引き摺り込まれてしまいそうになっている。

 

 間に合わないっ……私が追いつく頃にはもうヴィリアは海中に……! 


 そんな時、彼女の胸辺りに水滴が近づき、私の瞳に光を届けた。

 まるで、胸元にある何かが光る様に……。


 ……そうだ。前にも、こんな事があった。

 

 サツキと私達がエヴァーによって分離され、その先にいた敵を倒した後。

 階段を上り、再びサツキと会ったときには、彼女はもう彼女では無くなっていた。


 一歩、遅かったのだ。私があの時、もう少しでも、早くあそこにたどり着いていれば……。



 でも、今の私は、過去の私よりもきっと成長している。

 過去のことは変えられなくても、未来は変えられるはずだ。


 未来は目の前にある。変えて見せるんだ。そう、絶対に、絶対に……



 絶対に、間に合わせる!


「『機械仕掛けの(デウス・エクス)ッ!(・マキナ)』ァッ!!」


 そう叫んだ時には、すでに私の首筋には、それが食い込んでいた。

 

 一万分の一秒の内にそれは槍を形成し、私はすでに、それに何をさせるかを決めている。


 やれ、『神滅槍(グン・グニル)』。


 (くう)を裂き、進む道の先にある水滴は触れた瞬間に蒸発する。

 

 槍は神速を超え、流星と化し、地上に星屑の如き紅の煌めきを走らせた。


「___⁉︎」


 モンスターは一瞬にして角を根本から断ち切られ、驚愕の様な叫びを上げる。

 

 しかし、体はすでに海へと戻ろうとしていた。なす術もなく、それは海へと落ちていったのだ。


「……なんとか、間に合いましたか……」


 一瞬にして今までの人生を遥かに凌駕する集中力を使い、私は一気にどっと疲れてその場に足をつく。

 諦めかけていた未来を、変えられた。今度こそ、人を救えたのだ。


「何故……何故、私を助けた?」


 ヴィリアはいまだに棘が突き刺さった左手を気にも止めず、不思議そうな顔をして私に問う。

 恨んでいるだろう、とでも言いたいのだろうか。だったらそれは大違いだ。むしろ、考えを改められた。


 それに……


「……簡単ですよ。目の前で困っている人がいたら助けるなんて、当たり前じゃ無いですか」


 私はそう言って、ニッコリと笑みを浮かべた。

 

 ヴィリアは私の言った言葉に目を丸くして、その後にゆっくりと目を伏せて笑い。


「……そうか、そう、だよな。だったら、私もそれに答えてやろう」


 そう言って立ち上がり、再び刀を鞘から抜く。

 その刀には、炎が宿っていた。


 続いて風、水と、激しい音を鳴らして力を宿していく。

 それを、海に向けて構え。


「行くぞ、『七聖霊』!」


 そう叫び、大きく刀を振り下ろした。

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