第百六十話 二度目の謁見
マナティクス……⁉︎ ってことは、私、本当に……!
「本当にわ、私召喚を……!」
「成功も成功、大成功よフレイ! まさか本当にマナティクス様を呼び出しちゃうなんて……!」
サラマンダーは興奮気味に声を震わせる。
……サラマンダーは私の懐の中だし、マナティクスの姿が見えていないんじゃないのか?
そう思い、私は改めてサラマンダーにもマナティクスの姿が見える様にと懐からサラマンダーの柄を握って外に出す。
しっかりとマナティクスの前にサラマンダーを出してあげると、途端にサラマンダーは慌てる様な声を上げ始めた。
「ちょ、ちょっと……! マナティクス様の前に私なんかが出ちゃったらお目汚しになるわよ! フレイ早く戻してちょうだい……!」
「そう畏るな。人間はともかく、お前は私が作ったのだからな。もっと肩の力を抜くと良い」
まるで青ざめているかのように私に向かって願いを請うサラマンダーに、マナティクスは珍しく優しげな言葉を彼女に振る。
「そ、そんな……でも、マナティクス様のご厚意を無碍にするのもアレですし、そう仰られるなら私も失礼しちゃったり……」
サラマンダーは恐れる様な照れる様な、少し嬉しそうに言葉を収めた。
青くなったり赤くなったり……今日のサラマンダーは忙しい。
「さて……フレイ、貴様もそう悠長に話してはいられないのだろう。
今日だけは特別に、無礼は目を伏せてやるとしよう。さっさと話すと良い」
マナティクスは尊大な態度をいつもより少し控えてこちらに話しかけてくる。
いや、それよりも、マナティクス、なんで私達が急いでいることを知っているんだ……⁉︎
何かを通して見ていたとか? それとも、私たちの近くにいたとか……。
……でも、マナティクスが言う通りこんなことを考えている時間も惜しい。兎に角、単刀直入にでも話してしまおう。
「では……まず、サツキが何処にいるか教えて下さい!」
マナを通してサツキは『万物理解』を使っていた、だったらマナティクスだって同じことができるはず……!
「……分かってはいる」
マナティクスは少し言い淀んでポツリと呟く。まるで言おうか一瞬迷ったかの様だった。
やっぱり、分かるんだ……!
「!! だ、だったら教えて下さい! 直ぐにでもサツキのところに行って___」
「貴様らだけでは行けん」
はやる気持ちをそのままに叫び更に聞こうとする私を遮り、マナティクスはきっぱりと突き放す様に言う。
私は、予想外の言葉に一瞬固まってしまうが直ぐに思考を取り戻してもう一度聞き直した。
「ど、どうしてですか⁉︎ 私達では力不足だって言うんですか! サツキを助けられるならどんな苛烈な試練だって乗り越えて見せます! 貴方だって私が過去の試練を乗り越えたことを知って___」
「そうでは無い!」
捲し立てる私を再び遮り、今度は叫ぶ様にして言う彼女の言葉に、悔しさを一瞬感じた。
言葉を再び止め、私は彼女の言う言葉を待った。
暫くもしないうちに悩ましげにため息をつくと、彼女はこちらに聞こえる様に言葉を述べた。
「奴は、別次元にいるのだ」