第百五十八話 マナの塊
「……? フレイ殿、その機械仕掛けの神とは……?」
コウヤは眉を潜めて聞いてくる。
そう言えば、コウヤやブリュンヒルデにはまだ伝えていなかったか。
知らなければ私の言いたいことに気づけないのも仕方がない。
でも……サラマンダーは勘付いたようだ。
「そう言うことね……! コウヤ、よく聞きなさい。機械仕掛けの神はフレイのマナそのもの……つまり、巨大なマナの塊よ。それを自分で自由に作って動かして戦うんだけど……」
「なんと……そんな力が……!」
コウヤはサラマンダーの言葉に驚いた表情をするが、重要なのはそこでは無い。
大切なのはこの力の元となっている部分だ。
「今回は別の部分にその重要性があります。まず、私のマナはスキルでも無ければ魔法でもありません。
副産物としてマナが残る訳では無く私の使う力をそのまま使えばすぐさまマナとして取り出すことができるのです」
私の言う言葉にディオトルも何かを察したのかこちらへ顔を向け、シワの深い顔の上半分が少し見える。
「確かに、儂の机に残ったマナも元々扱っていた魔法に使用していたマナよりも遥かに少なかったですぞ……
フレイ殿、マナティクス様は多量のマナを必要としていたのですな?」
「はい。私のもつマナなら充分なはずです。しかし、全て出し切って仕舞えばマナ切れは必須。
私が倒れない量のマナが外部に必要だったのです」
外部のマナ、と言うのもあまり少なくてはいけない。少なくとも一割分は賄えるほどでは無いと体が持たないのだ。
でも……今、此処にはある。此処が、マナティクスを降臨させることのできる場所なのだ。
「……ほんとに、本当に、マナティクス様が来るの? 今?」
サラマンダーは私の言葉をもう一度反復して聞くが、先程よりもかなり期待の入り混じった声で興奮気味だった。
マナティクスがどれほどのことを出来るかは未知数だが……賭ける価値は充分にある。
「……ええ。ですから、呼びます。今すぐに!」
純白に光り輝く金属のような光沢を持つ機械。
その先端にまるで角のように一対になって生えている棘……簡単に人の肌を貫いてしまいそうだ。
だが、これは人を傷つけるためにあるにでは無い。全てを白日の元に現し、正しい道へと導く物なのだ。
「ぐっ……!」
いつもよりも力が籠り、棘は私の首に走る脈により深々と突き刺さる。
しかし、痛くは無い。むしろ心地良い程だ。
「私の持つマナをこの台座に注ぎ込みます! 規定値になれば、きっとマナティクスが来るはずです!」