第百五十七話 機械仕掛けの召喚
心臓の高鳴りを覚えながら、私は自分の考えをもう一度振り返ると同時に後ろを振り向く。
不思議と神妙な顔つきになってしまい、何か私の雰囲気から感じ取る物があったのかその場にいた全員が沈黙してこちらを見た。
「……その……突拍子もない事ではあると重々承知していますが、一つ気になることが___」
「言うならさっさと言え。あまり待ってはいられないぞ」
ヴィリアは言葉を溜める私に向かって焦ったそうに言う。
確かにそう迷っていても仕方がない。私は一度頷いて深呼吸をする。
「では……言います。……私は、今、ここでマナティクスを呼びます」
それを言った瞬間、各々がそれに対しての驚きを見せた。
コウヤは目を見開き、ブリュンヒルデは口の前で両手を合わせ、ヴィリアは言葉をつまらせているかの様に口を開けたまま驚愕していた。
「ばっ……! それ、どう言う意味よフレイ⁉︎ マナティクス様を呼ぶって……あんた本気⁉︎」
一番最初に口を開いたサラマンダーだったが、私の口から出た言葉が信じられなかったらしい。
しかし、それも当然の道理だ。自分が一度もあったことのないもの、ましてや空想上の存在とまで思われるような神をこの様なこぢんまりとした場所で呼び出すのは信じ難い。
むしろこの場にいる全員がサラマンダーと同じ意見かもしれない。しかし、私はマナティクスの意思がここにあると汲み取って、説明できる論理があった。
「……本気です。マナティクスは私の精神世界に来た時にも豊潤なマナを足がかりに、と自分自身で言っていました。……私はあの時マナを全力で使っていたはずです。つまり、彼女が顕現するには膨大な、活性化したマナが必要になって来るはずなのです」
ブリュンヒルデは分かったような分からないような、というような表情をしていた。
コウヤも何も言っていないあたりからしてまだ理解しきったというわけではないのだろう。
「……でもさ、フレイちゃんのその精神世界? にマナティクスさんって神様が来たことがあったとしてもそこのマナの量ってのはどれくらいだったの?」
イレティナは私の横から少し困ったような声ぶりで言う。
私の体内のマナはかなり多い。エルフという理由もあるが、スキルがないというところも理由にあるのだろう。日常的に使うということが少ない分マナもすぐに溜まる。そこから考えると……
「まあ……私の体内のマナだと思いますから……かなり膨大なのでは?」
イレティナはそれを聞くとやや閉口気味に小さく唸る。
……もしや、マナの量を懸念しているのか?
だったら、それは杞憂に過ぎない。マナの塊ならいつだって取り出せるのだから。
「……忘れていませんか? イレティナ、いえ……皆さんかもしれません。私の機械仕掛けの神を」