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第百五十二話 隠す理由

「貴様ら、あの『死神』の仲間なのか?」


 女は耳に入った言葉が気になったのか、今まで常に前を向いていたその頭をこちらに向けて少し興味を持ったように聞いてくる。


「“あの”とは、まるで実際に見たような言いぶりですね」


 私は少し疑りを持った皮肉気味な言い方をして女に返事をする。

 サツキの事はあまり話したくないのだ。サツキが死神と呼ばれていることが……。


「……話を逸らす気か? ……まあ、貴様の言う通りだ」


「……え?」


 予想だにしない答えに私は当惑し、目を見開いて聞き返す。

 彼女と、サツキが、会ったことがある……?まさか、私はずっとサツキと一緒に……。


「サンフォードに用があって来た時に、スキルを教えろとせがまれてな。

 奇特な女だ、とその時はそうとしか思っていなかったが……程なくして今まで一度も崩れる事のなかった王の城が崩れ、あの女が中から出て来たのを見た」


 女は憎しみを抱いた目で前を向く。

 サンフォードの城って……私が拐われて、サツキが助けてくれたあの場所……⁉︎

 あの時に……いたのか……


「ちょ、ちょっと待って。さっきからフレイちゃんは知っているみたいだけど、『死神』って何?」


 イレティナは私の後ろから困惑した声を上げた。

 それを聞くと、女はこちらを振り返り足を止める。その顔は意外とでもいうような顔をしていた。


「……教えられていないのか? このフレイとやらは、その『死神』の仲間だぞ?」


 ……!


「イレティナ、それは___」


「この女が教えないなら私が教えてやろう。『死神』は突如として現れた存在、国の王を殺してはその国を滅ぼすということを続けている。太刀打ちできないその強さと理不尽さは、まさに死を運ぶ存在というわけだ」


「死を……運ぶ……」


 女は淡々とその言葉を言う。

 でも、サツキはそんな人間じゃない……! 結果的にそうなってしまっただけだ。イレティナ達にしっかりとサツキを知って貰わないと……!


「イレティナ……違うんです! サツキはそうしたくてそうなったんじゃなくて、みんなを救いたくて___」


「本当にそう思っているの?」


「……え?」


 イレティナは、いつもよりも数段暗い声で私の言葉を遮って呟く。

 

「本当にそうだったら、フレイちゃんは隠す必要なんてないじゃん。私たちにあの時、話せばよかっただけでしょ」


「そ、それは……」


 私はそれには理由があると話すために頭の中の記憶を辿った。

 言えなかった理由を、言わなかった理由を。でも……どこにも、無かった。


 イレティナは、こちらを向いているのだろう。真っ直ぐとした声が後ろから私の耳元へ飛んできた。


「本心を隠さないでね、フレイちゃん」


 私の……本心……?

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