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第百五十一話 通行人

*


 木々が生い茂る森を抜け、周りの雰囲気はガラリと変わった。

 地面は石煉瓦で出来、早朝で人通りもまばらではあるがたまに見かけるほどであった。


 普通に歩いていたのならば、店などを回って情報収集でもしていたのだろう。

 しかし、今私の腕には……。


 風景を眺めていた首をもたげ、私は自らの腕に縛られた縄を不満げに揺らした。

 縄の先は女が持ち、私が揺らした縄の動きが伝わったのかこちらを疑わしげに睨む。


 不意に睨まれ、私は目を逸らして俯いているフリをした。

 いけない、いけない……あまり目立つような行動はするなと言われているから……。


 コウヤやブリュンヒルデ、それにイレティナも私と同じような状態で、縦に並んで歩いていた。

 さながら捕まえられた人間というような感じだが、私もこれの利点は十分にわかる。


 私達のような見知らぬ人間はあの山からして、ほぼほぼ来れないのだろう。

 見知らぬ人間、と言うだけで恐れる可能性だってあるのだ。

 それなら最初から捕まって無害化された状態の方がここの住民にも恐れを抱かせなくて済む。


 ただ、一つ気がかりな点があるとすれば……。


「……ん? ありゃなんだ?」


 歩いていた住民と思しき男女が二人、立ち止まってこちらを見る。

 ほとんどの人が気に止めようとしないが、こんな風にこちらへ興味を持つ人間もいるのだ。


「ヴィリア様がまた誰か捕まえたみたいだけども……誰かしら?」


「確かに見たこともねえな……いや、待て。俺知っているぞ、あの小さな女の子の事」


 きっと私のことだろう。世間話のような会話なのだろうけども……どうしてあの人が私のことを知っているのかはもう分かっている。


「『死神』と一緒にいるって言われていた子だよ……あれ?でも『死神』はいないな……」


 また……サツキが『死神』なんて呼ばれている……。

 少し、その男女の表情が怯えたものに変わったような気がした、その次の瞬間。


「お、おい……つまり今この島に『死神』がいるってことか……?」


「え……? そ、そんなわけ……『死神』自体、迷信みたいな噂だよ……」


「でも……その付き人が今目の前にいるんだぞ……?」


 ……やはり、気付く人間はそうなってしまう。

 私もサツキも、悪意を持ってそんな噂の存在になったわけじゃない。

  

 その恐れの目と言うのは、私にとって、まるで迫害されているような物だ。 

 ……実際に、石を投げられたわけではないが、心の中で石を投げられているような……そんな気がしてしまう。


 そんな時、ブリュンヒルデが私の後ろから小さな声で話しかけてきた。


「……フレイさんにどんな理由があるかは私は知らないけどさ、決して悪い人じゃないって私は思うよ」


「ブリュンヒルデさん……」


 ……でも、やっぱりサツキのことを助けてあげないと……

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