第百四十八話 極彩色の剣
女は私が戦う覚悟であるのを察したのか、腰に刺さる長身の剣を抜く。
鞘から現れた刀身は太陽の光に照らされて銀色に輝き、女の顔を照らす。
……あの鋭さ、首なら簡単に飛んでしまうだろう……。
「フレイ殿、相手もやり手と見える。俺も共に……」
「いえ、ここは私に任せて下さい。ブリュンヒルデさんのあの攻撃は広範囲に被害を及ぼしかねませんので……。それと、イレティナも今回は下がっていて下さい」
何も言わずにイレティナは頷くと、相当激しい戦いになると踏んだのか崖の上に登って遠くへと離れていった。
「……話は済んだか? だったら行かせてもらうぞッ!」
女は足で地面を蹴ると、風のように軽快な動きでこちらへと距離を縮める。
姿が一瞬見えたかと思うと消え、次の瞬間には眼前に銀色の刃が私の頭を今にも裂かんと迫っていた。
「女と見縊ったな! 喰らえ!」
私の脳天にその刃が当たろうとした、その一瞬。
私の右手に、太陽にも劣らないほどの光が渦を巻いて取り囲む。
渦は次第に収縮して行き、一本の白い短刀へと姿を変えた。
「フッ!」
風を切り裂く音が辺りに伝わると同時に、キン、と澄んだ音が空気を張り詰めさせる。
短刀は剣を押さえ、女の動きをまるで彫像のように止めていた。
「な……⁉︎ そんな短刀一本で私の刀が防げるはずは___」
「そちらこそ……子供、とでも思っていましたか? 少なくとも貴方よりは長く生きているはずですよ?」
四肢に補助の『機械仕掛けの神』を装着して、筋力を疑似的に底上げした。
負荷がかかりすぎると砕けてしまうが、何度でも補充は出来る。私一人でも充分……戦える。
「なるほど……確かに、私は貴様をただの下郎と見縊っていたかもしれない。
ならば……こちらも本気を!」
そう言うと、女の刀が赤く輝き爆発するように燃え上がった。
刀身全体を燃やしているにもかかわらず、鍔より先には全く燃え広がっていない。
何か、スキルのような物か?でも……炎程度なら問題は……
そう考えていた時、更に私は身体全体に風圧を感じる。
まるで台風のような風の強さに一瞬怯むが、私の目の先にはそれ以上に驚くべき事があった。
「風が……剣に……⁉︎」
炎に巻かれていた刀身は半分炎を残したまま、もう半分に風が渦巻いていた。
風に引き込まれたのか、女の周りを緑に色づいた葉が竜巻のように取り囲んでいた。
止まらず、水が噴き出したかと思うと風と同じように剣に宿っていた。
一体……いくつ剣に宿すつもりなんだ……⁉︎