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第百四十六話 目的

 その時、全員が沈黙した。

 サラマンダーは成り行きを見守って、イレティナは何を言っているのかわから無いとでも言うように。

 コウヤは……。


「マナティクス……書物で読んだ事はあるが、確か女神なのだろう?実在するかどうかも分からないものに会う、と言うのも中々稀有な動機に思えるが……」


 顎に手を当て、不思議そうにこちらへ目を向ける。

 確かに、普通に考えればその通りだ。でも……


「私は前、彼女に会ったことがあります。精神だけでの話ですが……」


「それは……失礼に思うかも知れないが、想像上の存在であるような事はないのか?」


「それは……多分、無いと思います。これを見て下さい」


 私は少し自分の手に入れたそれを見て、少し嬉しさを思い出しながらそれを取り出す。


「『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』……以前は私の中に眠るマナを強制的に引き摺り出し、心を閉じ込め、体の支配を奪う物でした。

 しかし、一人の精霊の手助けと、あの神様のお陰で自分の力として使えることができるようになったのです」


 白く輝くそれにブリュンヒルデはこちらまで近づき、その橙色の目を文字通り輝かせてまじまじと見つめる。同じ機械の体だからなのかも知れない。


「ほう……精霊と言うのは、刀に宿った精霊殿か?」


「ッ……」


 コウヤのその質問に、サラマンダーは少しはっとして、言葉を呑んで辛そうにする。

 ……ウンディーネもまだもう一度動くようになるかは分からない。やっぱりサラマンダーもそれを言うのはそれなりに辛く感じるのだろう。


「……あの、それはまだ言いづらいことと言いますか……今は少し……」


「いや、大丈夫よフレイ。ウンディーネはちゃんと戻ってくるんだから。

 ……ええっと……まあ、単刀直入に言ったら、私では無いわ。もう一人、私たちには精霊の仲間がいるの。

 今は動けないんだけどね、その子がフレイを助けてくれたのよ」


 サラマンダーは私の言葉を遮り、少し言葉を詰まらせながらもそのことを二人に伝えた。

 ……きっと私がサラマンダーだったら、そんなにはっきりとは言えなかっただろう。

 現に、私は新たに会った人たちにサツキの事を全く伝えられていない……。


「……ごめん、私がもっとちゃんとしていれば……」


 不意に、イレティナが申し訳なさそうに言葉を出す。

 イレティナは……自分の責任と思っているのか?まさか、そんなはず無い。むしろ命の恩人と言って良いほどだ。

 ……色々伝えたい事はあるけれども余りにも積んではお世辞のように思われてしまう。


「気にしないで下さい、貴方は私たちを助けてくれたんですから___」


 その時、不意に目の前で何かがカランと落ちる音がする。

 見ると、それはクワだった。持っていたと思われる人の姿は簡単な袋だけを持っている。この島に住んでいる人間なのかも知れない。


「あ……どうも、こんにちは___」


「待て、様子がおかしい」


 お辞儀をしようとしたところをコウヤに手で遮られ、私はそこで初めて異常に気がついた。

 口を開け、目を見開き、震えている。……明らかに恐怖の表情だった。


「し……し……『死神』の……付き人……⁉︎」


 不穏なその言葉に、私は嫌な悪寒を覚えた。

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