第百四十五話 馴れ初めその2
「……うーん……?」
ブリュンヒルデは困った様な顔をして首をかしげる。
何故そこで困るのだろう。何かしらの要因が無ければそんな事にはならないと思うのだけれど……
ブリュンヒルデが考えている中、ブリュンヒルデが答えるよりも先にサラマンダーは私に声をかけ。
「答えられない質問ね、それは。物に宿っていない間は、あたし達のこの人格もあってない様な物だから」
「あ……そうでした。記憶も無いんですよね……すみません、無駄な口を挟んでしまいました」
精霊はあの光の玉の時、そこにあるだけの物。
住んでいた森には全くいなかったから、知識としてはまだ私自身疎い部分もあるのだろう。
「いや、精霊の知識を新たに取り入れることができたのなら、その問いに意味はあったはずだ。
それにその事については俺も未だに疑問のままだ。一体どこから来てどうして俺のところまで来たのか……」
そう言いながら、コウヤは途方に暮れているかの様に木の合間から見える蒼い空を見上げる。
それはやはり、想像するしか無いのだろう。世界の心理と同じ様な物で、どうして太陽と月があるのかと同じくらいどうしようもなく理解できない話なのかも知れない。
……サツキも、よく空を見ていたな。
「だが、そんな神秘が愛おしかった。知り得ぬ物ほど美しい、だから俺は精霊を慕い、敬う事に決めた」
「でも私だけは相棒だからね! もっと気安く接して良いんだからね?」
ブリュンヒルデが慌ててその部分を訂正すると、コウヤもそれに少し微笑をし、頷いて返す。
「ああ、充分そうしているつもりだ。……さて、ではこちらも一つ質問をして構わないか?」
「え、ええ、構いませんが……」
唐突に神妙な顔つきになるコウヤに若干私は狼狽えるが、気を取られない様にはっきりと返事をする。
一つの質問につき一回……まだ守っているのか?
「貴殿らは何故この島に来た? 理由としてはいくつか考えられるが……知っておく必要があるかも知れないと思ってな。宝石か? それとも何か精霊に対する事について調べ物でも?」
普段と変わら無い言葉から、特別他意はない様に思える。
別に隠す必要も無い、正直に説明しよう。
「そういえば私も知らなかったかも! フレイちゃん行きたいって言っていただけだったもんね!」
「あ……確かに伝えていませんでしたね……。
では、イレティナにコウヤさんに、ブリュンヒルデさん。皆さんに一度伝えておきます」
少し溜めるような私の言いぶりにイレティナはより食い入るように私へ顔を寄せる。
「それは……マナの祖、マナティクスに会うことです!」