第百三十九話 オルゲウス到着
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その後は、私は一応警戒態勢もとき、再びオルゲウスへ向かっていった。
彼は後ろからついて来ているようだが、イレティナはその彼と私の上で楽しそうに話している。
何故後ろへ体勢を変えることまで出来るのか不思議でならないが、今はただただ驚くことしかできない。
しかし……あの武器は一体なんだったのだろう……?二丁の大型の銃かと思っていたら姿をいきなり変えてキューブ状になるし、彼がどうして飛べているのかもわからない。
何か特殊な力をいくつも持っているみたいだ……。銃のシステム自体まるで見当がつかないし……あの光がスキルなのか……?いや、浮いたりもしているし、奇怪な力が多すぎる。スキル以外の何かが起因しているのかも知れない。
「そう言えば、何であたしがいるって分かったらあそこまで態度変えたのよ? 精霊信仰なんてのはどっかの怪しい宗教にあったりするかもしれないけども、それだけじゃやっぱり腑に落ちないわ」
サラマンダーの言葉に、私もふと気がつく。
確かにその通りだ。助かったから忘れていたが、彼がそこまで精霊に対して厚い信頼、あるいは信仰心を持っている理由を私達は知らなかった。
「うむ……理由はいくつか有るのだが、説明をするなら朝になってからの方がいいかもしれない。
精霊殿には申し訳ないが、よく理解して貰うためだ、許して欲しい」
やっぱり精霊に凄い敬意を払っている……!
ますます気になるけど……仕方が無い、目下にオルゲウスが見えて来たことだし、一度浜辺にでも降りよう。
「そろそろ降りれますね。……イレティナも落ちないように気をつけてください」
初めて目の前に映る全く新しい地面に、イレティナは顔は見えなくとも肩から伝わってくる揺れ具合で明らかに興奮しているのが分かった。
下手に動かれてうっかり落としてしまった、なんてのも困るが……折角初めての体験なのだ。出来るだけこちらでカバー出来るようにしてあげたい。
「うわーっ! すごい! あそこ見て、すごく大きい火がついてる!」
イレティナの指差す先を見ると、かなり遠くの方だった。
しかし、イレティナの言う通り周りの建物を明らかに凌駕する大きな蒼い炎が灯っていた。
炎に照らされる街並みは私の故郷の街と良くにていて、レンガと石で出来た家々に少し懐かしさを感じる。
「お祭りでもやっているのでしょうか……? 綺麗ですが、あそこまで大きいと燃やすための材木も千年樹ほどの大きさになるかもしれません……」
その時、不意に私の服の中から青い光と赤い光が灯るような気がした。
どちらも、どこか見覚えのある光で……何かが起こる予感がしていた。