表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/681

第百三十三話 知りたいから

「……本気か?」


 族長はイレティナに向かって威厳のある声で問いかける。

 しかし、その言葉は声色とは裏腹に、どこか心配や、寂しさを感じさせる様な物だった。


 族長の心配する気持ちも、良くわかる。何せ自分の娘が今まで暮らしていた場所の遥か遠くへ行こうとしているのだ。


「あの……イレティナ、確かに私達は急いでいますがそこまでして頂かなくても……

 折角族長とも仲直りできたのに、また離れてしまうなんて……」


 あまりにも辛すぎる。私はそう思い、遠慮をする様に言った。

 しかし、イレティナは迷うそぶりも見せずに首を横に振る。

 

「ううん。私、フレイちゃん達を助けたいって理由もあるんだけど、それだけじゃ無いの。

 ……生まれてずっと、この山で暮らして皆と過ごしていた。もちろん不満はあったけど、毎日楽しかったんだ。

 でも、出会った友達、それにフレイちゃんと会って気づいたの。私の知らない事はたくさんあって、私がまだ行った事がない場所は私の想像している十倍も二十倍もあるんだって」


 イレティナは私や族長の困惑の様な表情よ雰囲気の中で、意外にも笑顔で明るい雰囲気で言っていた。

 とどまるような選択肢がまるでないかのようで、躊躇もしていない。


 イレティナはおもむろに自分の服の中を探ると、出したときに手に持っていたものは、私の作った濾過機だった。

 

「フレイちゃんが作ったこれ、初めて見て、世界はこんなに広いんだって気づいたの。

 フレイちゃんの持っている力も、自然な力じゃないって感じるし、もっと、もっとすごい技術が私の知らない世界にはあるんじゃないかって」


 イレティナはちゃんと自分の目標を持って動いているんだ……。

 だったら、私も拒む理由がない、むしろ応援したい程だけど……。


 横をちらりと覗くと、顔は見えないが若干俯いた族長がいた。

 私はまだイレティナと会ってたったの数日だ。族長はイレティナと今まで長い間一緒に暮らして、ずっと守ってきた。


 私のような部外者が口を出していい事じゃない。行くかどうかは、父親が決めるべきなのだ。


 そんな時、唐突にイレティナは族長の方へぐるりと身体を向けて立ち上がると。


「それに、まだお父さんとは仲直りしたわけじゃないからね! もっとたくさんのことを知って、お父さんよりもずっと賢くなって見せるんだから!」


 陽気な声で、イレティナは声をより一層強めていつもの元気な調子で族長へその言葉を言った。


「……」


 族長もそのイレティナの言葉に、垂れていた頭をはっとして持ち上げる。

 そしてしばらくした後に、ゆっくりと立ち上がり。


「……分かった、行ってこい。イレティナ」


「……!」


 イレティナは目を輝かせて、私の方へ向き直る。

 私も強く頷き、思いっきりベッドから立ち上がり。


「そうと決まれば、早速行きましょう! 目指すは女神マナティクス・カースのいる火山島国オルゲウス!

 イレティナ、どうぞよろしくお願いします!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ