第百三十二話 進む意思
……だとしたら、サツキが王を倒していた理由は、ここに通じているのではないのだろうか……?
私がいた森があのタケルと言う男とその仲間に襲われた時と同じ様に、強大な力を持った人間達が権力まで手に入れてしまった事を、サツキは止めようとしていたんじゃ……?
「フレイちゃん?」
「わっ!は、はい。何でしょうか……?」
私が思案顔をしていたのか、イレティナはこちらに声をかけてきた。
いきなりの事に驚きで声を上げてしまったが、なんとか平静を保って話す。
「あ、いや特に言う事はないんだけども、なんかボーっとしてたからさ」
私……ボーっとしていたんだ……。
……本当かどうか分からないことを推理するのは時間がある時だけで十分だ。
私は心の中で自分の頬をパシンと叩き、やる事をやれ、と言い聞かせる。
今はウンディーネもサツキも、サラマンダーも引っ張る事ができるのは私だけだ。
ここにサツキが居なくても、仲間なら引っ張ってあげなきゃいけない!
「……今から、オルゲウスまで行きたいのですが」
私は族長の方を向き、しっかりとした口調で話す。
それに対し、族長は若干難色を示す様な態度を見せた。
「うーむ……今から出ても五日はかかるかも知れない。オルゲウスは山の先にあるからな……」
「もちろんそれは承知の上です。ですから、この私の中で詰まっているマナをどうにかして欲しいのです」
「あんた、それって……!」
サラマンダーはその言葉を聞くとハッとして、私の言葉の意味を確認する。
「はい、機械仕掛けの神を使います」
仮神翼を使えれば、サラマンダーとウンディーネを乗せて飛んでいける。
もちろんスピードも申し分ない。数十分で着くだろう。
「マナが詰まる……?ああ、あの麻痺薬か。だったらここに置いてある」
族長はそう言うと、ベッドの下から箱を取り出し、そこからカプセルの様な物を取り出した。
私はすぐにそれを貰い、一刻も早く回復させるために水も飲まずに口に押し込んだ。
「だが……今は非常に暗い。方向を見失ってしまうかもしれないが」
若干薬を喉につまらせる私の横で、族長は少し案ずる様に言う。
確かに……私もサラマンダーもこの山の地形を把握し切ったわけではない。
どうすればいいか……
「フレイちゃん、私も行くよ」
「えっ⁉︎」
イレティナはふざけた様子を見せずに、はっきりとその言葉を口にする。本気なのだろう。
しかし……それでは私たちと別れた後、また一人になってしまう。イレティナは、それをわかっていて言っているのか……?