第百三十一話 魔境の理由
「___と、こんなところですかね……」
一頻り話終わる頃には、イレティナもほぼ理解していた様だが、半ば不満げな表情をしていた。
まあ、本来やり遂げようとしていたことと比べると彼女も不完全燃焼なのだろう。
「なるほどね……別に皆が無事なら構わないけどさ……。……まあ、ともかくそれはそれとして! お父さん!」
キッと睨みつけるイレティナに、族長はそうだったと言わんばかりに頷く。
「ああ、そうだったな。何故我々がこの山に訪れた人間を余すこと無く始末しているのか……
それは……この山の先にある島、オルゲウスの人々から、誰一人としてこの山に入れるなと言われたからだ」
「え……? ま、待って下さい。私もイレティナも、それは知っています。もしそれだけなら、ただ追い返すだけで良いのではないのですか……?」
私と同じ様な疑問をもってか、イレティナも怪訝な顔をして首を傾げる。
それを言われるのを知っていてか、族長は動揺する様なこともなく、依然背中に竹を入れた様な姿勢を崩さない。
「確かに、以前まではそうだった。だが……五年前……私が族長になるよりも前に異変が起きた」
「異変……?」
「それって……お兄ちゃんが死んだあの日……?」
イレティナは、何か思い当たることがあったのか神妙な顔をして族長を見る。
族長は心の底から出てくる様な、深いため息を吐く。
「……そうだ。あの日、お前の兄……イリクは外からやってきた人間に殺された。
あいつは油断をする様な男ではなかった。だから、これまでの様にはいかないと私は悟ったのだ」
「……一体何が変わったんですか……?前の族長の体調が芳しくなくなったとか……それとも誰かとても強い人が亡くなったとか……?」
私の質問に、族長は首を横に振った。
イレティナは事実だけは知っている様だが、それが理由になったとは思いもよらなかったらしい。
だから彼女もそこまで考えがいかなかったのだろう。
「……内的要因ではなく、問題は外の変化にあった。マナを扱う力が異常な程に強力な人間が現れ始めたのだ」
マナを扱う力って……スキルのこと?と、言う事は……サツキや王の様な人間がここに来た事があるという事……⁉︎
「今までの様な安全なやり方ではこちらが先に殺されてしまう。しばらくしないうちに私の父……この子の祖父が死んだ。世襲制で、次の代は私に譲られたのだ。後は……恐らくイレティナが話したのではないか?」
それで、族長はあの矢をオルゲウスの人に……?事の発端は王達にあったって言う事……?