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第百二十九話 夜

*


「……イレティナ、なかなか目を覚ましませんね」


 戦いの決着がついた後、日が沈みかけていたのでイレティナが休められていた場所に一日だけいさせてもらうことになった。


 部族は私たちに最早敵意を抱いていないようで、あっさりと彼らの領域にまで入れてもらえた。

 しかし、まだ油断はできない。私達が眠ったところを狙って闇討ちなんて事もありうる。


「……」


 ベッドにすわり、私が意味もなく手を握ったり開いたりしていると、意識をすでに取り戻していたサラマンダーの方から気にするような雰囲気がしてきた。


「まだ、『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』使えないの?」


「え? ああ……そういえばまだ使えませんね……マナを止めるような物なのでしょうか……?」


 自分の症状に疑問をもって推理をしている私を見てか、サラマンダーは珍しく長いため息を吐く。


「イレティナが勝ったのは良いんだけれども、この先が少し……心配ね。

 フレイはそれの力が使えない、正直言ってまた戦力が減っちゃった。それに……」


 サラマンダーの横には、青い液体が詰められているビンがあった。

 ウンディーネの形が崩れてしまった後、あそこに残っていた残骸をかき集めて入れた物だ。


「……あの子も、目を覚さない。もしかしたらもう……いや、悪いことは考えないようにしましょ」


 サラマンダーも、ウンディーネを少なからず仲間と思っている。

 きっと私と同じくらい……それ以上に、心配しているのだろう。


「そう……ですね」


「……」


「……」


 長い、沈黙が続いた。決して悪い状況では無いのに、私たちの心はどこか沈んでいたのだ。

 しかし、そんな時だった。


 唐突に、私たちのカーテンごしで何かが叩きつけられるような鈍い音がする。


「な……⁉︎」


 イレティナの居る場所だ。一体何が……?

 驚きながらも警戒をして、私はサラマンダーを携帯して恐る恐る覗く。

 そこには、呻き声のような物をあげながらベッドをへこませたイレティナがいた。



「まただ……また、私は皆を守れなかった……もう二度と、倒れないって誓ったのに……!」


「イ……イレティナ……?」


 半ば怯えながら声をかけると、イレティナは涙を流していたのか両頬に涙の跡を残しながらも目を丸くしてこちらへ振り返る。


「フ……フレイちゃん……⁉︎ どうして、私は負けたんじゃ……」


 ……なんと説明しようか。負けたけど勝った、というのは混乱しそうだし……とりあえず。


「……勝ちましたよ、イレティナ」


「……!〜〜〜〜〜っ!」


 イレティナは私が言った言葉に、心底喜んで飛び上がった。

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