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第百二十六話 速さ

 手加減……している……?

 まさか……明らかに全力の拳だった。イレティナの腹が避けるんじゃ無いかと言うほどだったのに……。


「……三年前、私がビースを連れて戦いを挑んだ時も、お父さんは……彼女を……片手で殺した。

 私も……殺されるって思った。でも……自由になるために死ぬのなら構わないって……覚悟をしていたの」


 イレティナは息遣いを強くして話す。

 ビースって……もしかしてイレティナが一緒に戦ったって言っていた……私たちと同じような人のことか……?


 というか……片手で……殺した?ビースと言う人がどう言う人かは知らないけど……そんな簡単に人間が死ぬことなんて無いはず……。


「でも……お父さん、私を殺さなかった。……ビンタ一回……たったそれだけで私は気絶した。

 弱い自分を恨んだ。でも……それと一緒に、本気で戦わずに私を殺さなかったお父さんも……」


「……」


 気絶寸前に見えるイレティナの弱々しい姿とは裏腹に、その言葉には何がなんでも勝つという執念が垣間見えた。

 族長は歯を食いしばってなんとも言えないという表情をしていたが、イレティナの言葉に反論しようとはしなかった。


「あれから……ずっと私は背中にビース感じているの。なんで私だけ生きているのかも分からない。

 ……でも……!また、同じことが起きたの……!友達ができて……お父さんと戦うことになって……気絶なんて……していられない!」


 そういうと同時、イレティナの姿が目の前から掻き消える。すぐに視線を族長の方にずらすと、イレティナが族長の顎にハイキックを叩きつけていた。


 族長は体が数秒硬直してしまい、その間にイレティナが膝、手刀、拳を使い首、腹、頭と次々に打撃が入っていく。


 は……速い……! この速さはサツキの『神速』と同じレベルの速さ……!

 こんなに速い動き、生身の人間ができるのか……⁉︎ いや、スキルの可能性だってある……。


「お父さんの強さが力にあるなら!」


 族長の首にイレティナの手刀が刺す。

 地面に落ちることすら許されず、族長は打撃を受け続けた。


「私の強さは……磨き上げたこの強さは速さにある!三年間、山の中でずっと修行をしてきた!いつか誰かを守らなきゃいけない時が来ると思って!」


「ぐっ……!」


 連撃の最中、ついに族長の体の硬直が解けイレティナの腕を掴む。

 そのまま地面にまで足を伸ばして食い込ませると、イレティナを投げ飛ばした。


「きゃぁっ⁉︎」


「……いいだろう。この父にその力を見せてみろ、イレティナ。そして、勝て!」


 ……ついに、二人が本気を出す時が来る。イレティナは怯えを捨て、族長は手加減を捨てた……!

 イレティナ……勝ってください……!

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