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第十一話 黒き鎧

 その黒き鎧は、地面を蹴り私の前に飛んできた。

 

 『気配感知』を使っていても判断しきれないレベルで速い……!


 そして一瞬、その鎧が手刀を構える姿が目に映る。


「見えたッ!」

 

 私は予想できる間合いを判断し、刀を構え手刀を弾こうとした。


 しかし、刀と手刀はそこで鍔迫り合いとなった。


「なっ……!」


「その装甲はマナの凝縮体。ただの鉄屑と付け焼き刃のスキルなど相手ではありません。ははははは!!」


 コウキは私の驚く様を見ながら、嗤い声を上げる。


 鎧は体勢を整えるためか、一度後ろへ戻る。


 私は身震いする気持ちだった。


 手刀だけで刀と渡り合う奴なんて世界中探しても滅多にいないだろう。


 鎧はそんな私の感情も知らず、すぐさま次の攻撃へ移ろうとする。


 攻撃を防ぐのが駄目なら、その体を削ぎ落としてやる!


 鎧は再び脚で地を蹴り上げ、高速で私へ近づく。


 私はとっさに刀を取り、『気配感知』をフル稼働させる。


 ……読めた!右方向から拳が飛んでくる!


「食らえッ!」


 鎧の肩から腰にかけ、斬りつける。


 だが、刀はその鎧の形をまるで霧を切るかのようにすり抜けた。


 その現実に困惑するよりも先に、私の左半身から衝撃が走る。


「がっ……!」


 そのまま私は弾き飛ばされ、壁に叩きつけられた。


 な……何が起こったんだ……?


 意識が朦朧とする中、その先を見ると、そこには鎧が佇んでいた。


 そして私は何が起こったのか理解する。


「ざ、残像……!私が切りかかったあれはすでに横に飛んでいた……!」


 『気配感知』でも判断しきれなかった……。スペックがまるで違う……!

 今ので確信した……。今の私じゃ勝てない!


 そう思った時、すでに鎧は私を再び殴り飛ばしていた。

 今度は城の壁も耐えきれず崩れ、私は外へ弾かれた。


 やば……落ちる……。


 地面に激突しようとしたその時。


 私は何かに抱え込まれていた。


 ゴツゴツとした感触ではあるが、暖かさを感じる。


 ゆっくりと目を開けると、目の前に赤い髪が見えた。


「イツ!」


「よう!どうも大変なことになってるらしいな。ひとまずこっから逃げるぞ!」


 イツは私を抱え込み、王都へと姿をくらまして行った……。




「あの赤髪……確か例の忌々しい義賊のものか」


「王、如何なされますか?王都全体に伝えることも出来ますが……」


「いや、泳がせておこう。これから更に面白くなる……ククク……」




 目が覚めると、私は知らない場所にいた。


「ここは……?あぐっ!」


「おーおー、あんま動くなって。お前ボロボロなんだから」


 体を触ってみると、私は包帯でグルグル巻きにされていることがわかった。

 

「ひひ……まさかあなたがこの少年とお知り合いだったとは。

 ここは我々が拠点としている宿屋ですよ」


 タオルとバケツを手に抱え、持ってきたお姉さんは紫色の髪をして目の下のクマがひどく……


「って、あの時のお姉さん!?」


「ええ。メリーと申します。なにぶんひどい怪我でしてね、一応治療は済ませましたよ。

 流石に骨までは治せませんでしたけど……ひひ」


 なるほど……ズキズキと痛むのはそのせいか……。


「にしても、お前をそこまで追い込んだ野郎ってのは何者なんだ?

 お頭との戦いでも無傷だったのに……」


 ……なんと言うべきか……


「憶測ではあるんだけど……フレイだ」


「は!?フレイが!?あり得ねえだろ!

 だってお前はあいつを助けるためにここに……」


 イツは冗談を言ったと思ったのか、半ば笑いながら反論する。


「フレイが……何かの機械を突き刺されて、それで煙が出て……黒い鎧を着た奴がいた」


「っ!……あれが完成してしまいましたか」


 メリーさんは何か神妙な顔つきをして呟いた。


「あれ……というと?」


「……私は、昔この国の王、コウキと旅をしていました。

 ただ、彼は戦うことに疲れ、次第に戦うことを恐れるようになりました。

 私達はそこで、彼に暗示をかけたんです。

 彼が自分の認識することを都合よく書き換えるように。

 ……ひひ、今考えれば彼を道具としてしか思っていなかったのかもしれません。

 こうなったのも自業自得ですね……」


「つまり……あの王は完全に気が狂っているというわけではないの?」


「いえ、昔は違くとも、今は狂気に染まっていますよ。

 暗示をかけられた彼はそれはもう破竹の如く進んで行きましたよ。

 ただ、本気になった彼を止められる人間はいませんでした。

 村が魔王討伐のために邪魔なら、燃やしました。

 邪魔な渦潮は蒸発させました。

 ただ、彼はこれが自分がやったとは思っていません。

 魔物がやったと考えているのです。」


 え……?それって……つまり……


「彼は仲間さえ殺してしまいました。

 彼の行動に反発した二人を。

 一瞬でしたよ。

 私は、そこで気づきました。

 もう、この人に付き従うしかないのだと。

 これは私たちが育ててしまった魔物だと。

 暗示は解きましたが、彼の狂気はもう彼のものになっていたのです」


「そんな……」

「国民を皆殺しにするような奴だ。不可解には思わないな」


「そんな時、彼はマナについて学んでいました。

 彼のスキルを使ってですが。

 そこである閃きが産まれました。

 スキルを持たないものを強化しようと。

 何を思ってその判断に至ったかは私にも分かりません。

 彼は、棘のようなものを対象の肉体に挿し、そこからマナを抽出しようとしていました」


 私とイツは、話を食い入るようにして聞いていたが、そこで私は気づいた。


「確かに……あった。棘が。鎧のところにも見えていた」


「はい。……ひひ、滑稽な話ですが、化物を生んだこの私に、力を貸してはくれませんか?」

次回より王都探索が始まります!

目指すは打倒コウキ!

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