第百六話 果物
目的地を再認識し、私達が歩き始めて数時間たった。
はげた部分は確認した距離から、歩いてほぼ七、八時間かかるほどの距離だ。
まあ、元々は三、四時間だったんだけども……。
「いやー、まさか逆方向に歩いていたとはね。全くついてないねぇ。ははは!」
こんな冗談みたいなことあって良いはずがない。
七、八時間って……夜……!もう着くころには夜……!
「……と言うか、何故あの部族はああまでして島へ通そうとしないのですか?
命じられているとはいえ山に入った直後に矢が撃たれたんです。見張りの数だって馬鹿にならないはず……」
「私のお父さんは真面目だからねー。普通よりも頑張っちゃうって言うか、一回りも二回りも凄い出来で仕上げていたよ」
なるほど……いや、でもそれだけだろうか?何かもっと別の理由がある気も……
その時、私の腹からぐぅと音が鳴った。時刻は夕方近く、そろそろお腹が減ってもおかしく無い時間だろう。
「そろそろお腹になんか入れよっか!果物だったら……ほらあった!」
イレティナはそう言うと同時、近くの木をスルスルと登り、丸い粒がいくつも連なった果実をもぎった。
……部族というのは全員これほどの実力を持っているのだろうか……?
今わかっている事でも簡単に周りを見渡せる夜目に遥か遠くを見渡す事の出来る視力。
飛んでくる矢を手で掴む握力と動体視力……まあこれに関しては全員できるのかはわからないが。
「ごめん!両手塞がっちゃったからこれちょっと持ってて!」
「わっ!……っとと……」
イレティナは上の空だった私に大量の何かを手渡す。
それは、彼女がどっさりと採った色とりどりの果物。
「一瞬でこんなに……!?」
イレティナはまたすぐ木の上に登り、ガサガサと音を立てて上で果物を採っている。
こんなに果物があるこの山の栄養の高さにも驚いたが、こんなに早く、たくさんの種類の果物を撮る事にも驚き……。
そう言えば木々の一本一本の樹皮がちょっとずつ違うような気がする……もしかして、これ全部別の種類!?
「はい!また持っといて!」
また、一、二分もしないうちにイレティナは大量の果物を……
「も、もういいです!これで食事には十分ですよね!?これ以上とっても食べきれないですし……!」
「そう?じゃあ私の分とってくるねー」
イレティナはそう言い、また木を登って行った。
……私の分?
「うん!おいしい!……あれ?フレイちゃんそれまだ三十数個目ぐらいでしょ?」
イレティナはあのあと私の五倍の量を取ってきた。
しかも全部食べ切ったのだ。
「な、なんでこんなに食べられるんですか……うぇっぷ」