第百五話 回避
私はまばたきをするよりも早く『絶対聖域』を発動する。
光り輝く盾は迫りくる矢を跳ね返し、なんとか一時を凌ぐ。
「っ……!」
しかし、その一本の矢が放たれた事によってこちらに注目をするものが現れてしまったらしく、目の前から再び四、五本の矢が飛んできた。
私を逃さないように、周りを囲うようにして飛んでくる。
またあの時みたいに何本も矢が飛んできたら、また壊されてしまう……!
『無限連撃』は一度使うと消費したマナがリカバリーできないから使えない……。
そんなことを考えている間にも、矢は次々と刺さっていく。
跳ね返すのも難しく、黄金の矢が『絶対聖域』にヒビを入れていく。
迷っている余裕は無い……!
こうなったらマナ切れを起こしてでも『無限連撃』を使うしか……!
私のの背後に現れた輪はスピードを早めながら回転していく。
守護の要が割れると同時に、山を更地へと変える程の威力を持つ光剣が次々と顔を出す。
「無限連___」
その言葉を宣言し、まさに今、放とうとした瞬間。
目の前に、イレティナが現れた。
「ストーーーップッ!」
「え!?」
唐突な出来事に私は発動しようとしていた光剣達の回転を緩めてしまう。
イレティナは私の人形を盾に矢を受け止め、さらに私の懐に入っていた黄金の矢を投げ飛ばした。
「な……何をしているんですか……!?」
「まあまあ、見てなって」
イレティナは得意げに私を連れて下に降りて行こうとする。
しかし、もう矢がこちらへ飛んでくることはなかった。
どうして……!?
「なんで矢が飛んでこない、って顔しているね!あの矢はね、私達しか扱えない物なの。
どうしてかは誰にもわからないんだけれど、あっちからしたらその矢が飛んできたっていう事実に変わらないの」
って、ことはつまり……
「無闇に仲間がいるかも知れないところに矢を放つことはできないから止まった、と言うことですか……?」
「そう言うこと!最初からこうすれば良かったんだけどもフレイちゃんが持っていたとは気づかなかったから、ギリギリの所で使う感じになっちゃったね」
う……黙っていた事に少し罪悪感が……
……まあ、過程がどうであれ助かった事に変わりはない。
方向もわかった事だしあの更地へ……!
「では……イレティナ、行きましょう!二人を探しに!」