第百一話 サツキ、覚醒
「マナティクス・カース……!」
それは、マナの祖。私が会おうとしていた存在、そしてフレイに力を与えた存在。
そんな存在がどうして私の心の世界に……!?
「このままでは貴様が戻って来れなくなる、と思って急遽道を繋げてきたのだが……
まさか記憶を自分で取り戻すとはな」
白く輝くその巨大な玉は私の脳に響くように言葉を紡ぐ。
というか、何故私はこの神様と話しているんだ……?
「道をつなげると言うと……どういう事ですか?
フレイの時もそんな感じで……?」
未知の存在に思わず敬語を使ってしまったが、どうも予想外のことが連続して起きているようだ。
「道と言うのはマナを柱にしてつなげる……いや、今話すには長すぎる。
また今後……だ」
マナティクスが面倒くさげにそう言っていると、バリバリと空気が揺れ始める。
その先には、私たちが話している隙に力を貯めていたのか、クチバシが蒼く輝く鷹の姿があった。
「まるでこの精神世界から出られるような言いぶりだな……この私の呪縛からは逃れられんぞ!」
高笑いをし、鷹はその巨体をゴムのように縮める。
燃え上がるように輝く蒼色がその全身を包み込み、バネのように一気に体を引き伸ばし、こちらへ矢のように向かう。
「逃れられるとも。サツキ……と言ったな、これを使うと良い」
マナティクスがそういうと、白いエネルギーが私へ近づいてきた。
「……?」
不思議に思いながらもそれを受け取ると、溶けるように私の身体へ沈んでいく。
それと同時に起きた体の変化に私はすぐに気づきマナティクスの方を向く。
「これって……!」
「ハハハハ!喰らえ!貴様は再び我らの元へ戻るのだ!」
バリアと嘴が激突し、青いエネルギーと白いエネルギーがお互いに鬩ぎ合う。
白い光が強まり、バリアを貫けないかと思った次の瞬間更に鷹は回転を加え始める。
それによって、青い光が白い光を押し込んで行き、バリアへヒビが入る。
「終わりだ!まとめて食らってくれる!」
ヒビが更に食い込んでいく。
卵の殻を破るようにクチバシが食い込んでいき、ついに砕け割れた。
「ハハハハ!私に叶うものなどいな……な……なんだと!?」
鷹が見る先に私とマナティクスはいなかった。
困惑する鷹は何故いないのか等を考えているのだろう。なに、単純明快な話だ。
「『神速』!」
「ぐえぇっ!?」
私は鷹の脳天にかかと落としをかます。
鷹の目玉は飛び出、嘴はひしゃげ頭蓋骨も粉々に砕け散った。
「お前の上にいたんだ。マナティクスからマナをもらったんでね」
私は『時空転移』を使って頭上へテレポートしていた。
マナティクスが与えたあの白い光はマナそのもの、私の精神にマナを与えていたのだ。
「お、おのれ……貴様などに……!」
「お前を殺せば多分戻れるんだろう?というか、まだ生きているとは……仕方ない、これを使うか」
私はそう言い、魔法陣を展開する。『時空転移』で持ってきた物体を『変化』させ、高熱を持つ光にする。
新しい技、浄化の光線。
「ねつ、こう、せえええぇぇぇぇぇん!」
極太の光線が鷹の巨体を包み込む、叫び声すらもかき消えた後には消炭すら残らなかった。