第九話 酒場での聞き込み
ということで、私達は酒場を探し始めた。
家が立ち並ぶ風景が遠くに見える。
中に入って改めて分かったが、中心に立っている城は西洋風の城だった。
どうもさっき見えていた塔はこの城の一番高いところらしい。
「はー……本当にデカい……」
おっと?あの賑やかな雰囲気の1階建の建物……。
私はそれが気になり、中を覗いてみると。
多くの人が酒やつまみを食べ、ウェイトレス達が食べ物を運ぶのに勤しむ姿が広がっていた。
ビンゴ!やっぱり酒場だ!
さて、まずは聞き込みだが……。
私は聞きやすそうな人を探すため、辺りを見回す。
そして、二、三人で賑やかに酒を飲んでいる男たちが目に止まった。
今こそ転生で得たこの肉体を活用する時!
まずはあの人達に聞いてみよう!
「やあ!そこのお兄さん達!私と一杯どうかな?」
「おぉ、可愛い嬢ちゃんじゃねえか。構わねえぜ。座りな」
ラッキー♪人当たりが良さそうな人をキャッチ!
「ありがとうありがとう!ではお邪魔して。
私、この国の田舎の方から来たんだけどさ、友達がここまで拐われちゃったみたいなんだよね」
「ええ!?嬢ちゃんの友達がかい!?気の毒なもんだなぁ……」
髭を顎に生やしたお兄さんは顎を撫でながら言った。
「まあそれでさ、何か知ってる事とかないかな?
白い髪をしていて、見た目は11歳くらい」
「うーん……王都の悪い噂は絶えねえけどよ、全く知らねえな……」
「ひひ……お姉さんお姉さん、私、見ましたよ」
もう一人のお兄さんも申し訳なさそうに頭を掻いていると、私の後ろから女性の声がした。
振り返ると、そこには痩せ細った白い身体。
そして全く手入れをしていない濁った紫色の髪、片目が髪に隠れ目の下には酷いクマがある女性がいた。
一瞬その身なりに驚いたが、それよりも彼女は今私にとって信じられない言葉を発した。
「見た……!?見たの!?フレイを!?」
「ええ……ここではなんですから、一度外でお伝えしましょう」
まさかいきなり情報が得られるとは!
しかし、この人は何者なんだろう?
見た感じ浮浪者と言った風貌だけど、なんというか、正解ではない気がする。
「お兄さん達、どうも!これはお礼金として取っといて!」
席を離れたところで、私は振り返りテーブルに向かってオウル金貨を1枚トスした。
私達は、王城のすぐ目の前にいた。城の周りには水が流れているのが見れる。
「それで?一体何を見たの?」
「はい、黒尽くめの集団、要するに王のエージェントが城内に先程あなたが言っていたフレイさん……でしたっけ?
彼女を運んでいました」
黒尽くめ……イツの言っていた情報と合致している。
王が関わっていることは間違いなさそうだ。
「しかし……知ったところでどうするつもりですか?
城のあらゆる入り口には24時間常に門番二人が見張っているんです。
侵入はまず不可能ですよ」
ふーむ……確かに普通なら難しそうだ。
けど、こちとら神のご意志だ。王に匹敵する力は持っている。
「問題ないさ。私ならできる」
「ほう?それはどうやって?」
彼女は興味深げに笑った。
「まあ見てなって」
そう言いながら、私はスタスタと門に向かって歩き出す。
それを見た門番は、私を訝しみ、こちらにズカズカと近づいてくる。
「止まれ。通行証を」
「んなもんないよ。こっちは大切な仲間拐われてんだ。無理やり行かせて貰う」
私は怒りでつい挑発的な言葉を向けてしまった。
「なんだと……!おい!止まれ……ぐふっ!」
まあやることは変わらないんだけど。スキル発動。
私は門番の顔面にすかさず裏拳を放ち、城を囲む川に落とした。
「なっ!デューク!貴様……!」
もう一人の門番も襲いかかって来たが、『気配感知』ですぐさま避けた。
門番はそのまま体勢を崩し、地に膝を付いた。
「おい!待て……!消えた!?」
そりゃまあそうだろう。『気配遮断』も使った。
もう奴らに私を認識する事はできない。
……できるならここにいる人間を全員捻り潰してやりたいが……。
あんまり騒ぎを起こしたくはない。王の所まで安全に行くために…。
「何やら、城にネズミが入ったようだ」
私は紅茶を一杯飲み、息を吐く。
「そのようです。すぐにエージェントを手配し____」
「ああいや、その必要はない。
どうやら冒険の日々以来の楽しい出来事が起きそうだ……」
この世界に転生したあの日、このスキルで、魔王を必ず打ち倒すと決めていた。
なのに、あのクソ老人が倒してしまって、私は転生した意味を失った。
仲間も、メリー以外は全員…。
だが、この城に入ってくるような人間。
少なくともレベルは30以上はあるだろう。
「その人間が来るまでは、君で楽しむとしようか。
エルフちゃん」
檻に入れ、天井からぶら下げた白髪のエルフ……。
名前は……フレイ、だったか?
名前なんてどうでも良いさ。
どうせやる事は変わらない。
「むーーーっ!むーーーーーっ!」
口を塞がれてなお、そのエルフはこちらを睨みつけ叫ぶ。
「ふふ……活きがいいほど嬉しいものだ……」
そのとき、背後のドアの近くから気配を感じた。
っ!ふふ……来たか。
「君で楽しむのは後にしよう。今はお客人の相手をしなければ」
そうして私が檻を収納すると、部屋のドアが誰もいないはずなのに開き、そこから人影が現れる。
「どうも〜。私サツキと申します。積もるお話が有るんですが、よろしいですか?」
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