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少し追加いたしました
最初にお父様は私に今までの事を謝罪した、セレイル様は幼かった私を引き取り一緒に暮らしたいと、何度も頼んでいたと涙ながらに語った。だが、第二王子の婚約者である私を連れ出すことは出来なかったと。
ならば、あの家での私の立場ぐらい改善できたのでは?この二人には不信感しかない。
メリア様とは離婚することは出来たらしい。理由は相手の不義だそうだ。メリア様は嫁いできてから通いの使用人と親密な関係だった、今まではメリアの実家から相当な借金がありメリアの言いなりだった伯父が離婚の妨害をしていたが、その伯父も亡くなり障害がなくなった。
ワイズフォルト国の爵位は返還し、屋敷は売却の手続きをしている。
お父様はワイズフォルト国に未練はないようだ。
ドヘイド王国の王太子殿下の婚約の申し入れの話になった。お父様は私の好きにすればいいと言いながら、新たにこの国に亡命してきたが、王太子殿下に目をつけられお断りすればどうなるか等と呟いている。
そのチラ見するの辞めてもらえませんかしら。
「婚約のお話は考えます、でも隣国の第二王子から婚約破棄された私で良いのでしょうか?」
「それは、リリアナ様が素敵な淑女ですから、王太子殿下も妃にと望まれたのでしょう。」
「そうだ、リリアナになんら落度はない。王太子殿下の婚約者にも相応しい。卑屈になることはない。」
二人の言い分は私に決めさせる気はなく、婚約は決定してる気がする。
お父様に、コニアをまた私付きのメイドとして雇いたいとお願いした。それから、弟のジェンリーに会いたいと。直ぐにお許しをいただき、コニアの元に向かった。
馬車を出してもらい精霊達に案内してもらった。ワイズフォルト国に入って暫く走っていると洗濯物を干している女性の回りに精霊が見えた。コニアがいた。
コニアが馬車に気付き走り寄って来る。
馬車から降りてコニアに抱きついた。
「お嬢様、はしたないですよ淑女が大股で走るなんて」
涙を流しながら、そんなことを言うコニアに「今だけ見なかったことにして。」と私も涙がこぼれた。
コニアは今の職場に迷惑をかけられないと言うことで、職場に許可を頂いてから私の元に来ることになった。
弟のジェンリーに会った。10才と聞いていたがもっと小さく見えた。ベッドから出て挨拶をしようとするのを止めて私からジェンリーに近付き挨拶をした。
「初めましてリリアナです。あなたの姉です。よろしくお願いいたします。」
「ジェンリーと申します。お姉さまとお呼びしてもよろしいのでしょうか?」
とても小さな声で絞り出すように話し、恥ずかしそうにはにかむ笑顔に泣きそうになってしまった。
ジェンリーの体を抱きしめてヒュヒュと異音がする呼吸が少しでも楽になるように精霊達にお願いした。精霊達はジェンリーの周りを飛び回った。
「お姉さまに抱きしめていただいたら、苦しくなくなっていきました。不思議です。」
「ええっ、本当にいつもよりお顔の色がよく見えます。」
ドロシーが涙声でそう答えた。
「そう?では毎日ジェンリーを抱きしめに来てもいいかしら?」
「毎日、お会いしていただけるのですか?」ジェンリーは顔を赤く染めて嬉しそうにそう言ってくれた。
「リリアナ様、あまり近付き過ぎては、大事なお体に何かあっては大変です。世話は全て使用人達がしますので、リリアナ様はお気になさらず」
実の子が苦しんでいるのに優しい言葉すらなく、本人の前で病が伝染るから近付くなとは、何とも嫌な気持ちが拡がっていく。
ジェンリーは俯いたまま、震えている。
「リリアナ様離れて下さい。病がう、うっ、うつる・・・」
ぎゅっと抱きしめて頭を撫でた。
「いいえ、伝染りません。大丈夫、大丈夫です。」
声を殺して泣く10才の小さな弟。
「リリアナ様はとてもあたたかいです。」
「ところで、私のことは姉とは呼んでもらえないのですか?」
「あっ、いいえ、お姉さま、お姉さま。」
「お嬢様、今日はもう遅いのでそろそろお休み下さい。」
ドロシーが涙を拭きながらジェンリーの体をベッドに寝かせた。
扉の側には既にセレイル様の姿はなかった。
ドロシーの話では母であるセレイル様も父もジェンリーに近付く事も話し掛けることもなく、まして優しく抱きしめることもなかったという。
もっと早く知っていれば、精霊さんも知っていたなら教えてくれてもいいのに。
楽しそうに飛び回る精霊を見てため息が出た。
誤字脱字報告ありがとうございます。