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令嬢は愛し子でした  作者: 那花しろ
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父の別邸は、ワイズフォルト国の屋敷も大きかったが、比べても見劣りしない立派な屋敷だった。



早朝にも関わらず、執事やメイドが出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ」

私達を迎えてくれたメイドに見覚えがあり、誰だったか思い出そうと記憶を探る。

「お嬢様、お久しぶりでございます。10年前まで御屋敷で執事をしておりました、ジードでございます。同じくメイドのドロシーです」


優しい微笑みに、生まれたときから8年間側にいた2人を思い出した。

小さい頃に突然辞めてしまい、寂しい思いをした。


「お嬢様、先ずはお入りになって、ゆっくりとお休み下さい」


2人に案内され、中に入ると、私を見つめる女性がお父様の隣にいた。


「リリアナ、こちらがセレイルだ。セレイル、私の娘のリリアナだ」

「初めまして、セレイルです。大変でしたわね、こちらではゆっくりお休み下さい」


「初めまして、リリアナと申します。突然お伺い致しまして、ご迷惑をおかけいたします」

セレイル様は小柄なふんわりとした美しい方だった。



まだ朝も早いので、少し休んでから話をすることになった。案内された部屋の湯槽で体をきれいにしたら、少し横になろう。疲れた・・・。


お湯に浸かりぼやっとすると、どうしても考えてしまう。あの後どうなったのか、義母と義妹の事、ルミナと第二王子・・・ウェズリ王太子殿下・・・婚約の話は本気かしら。



『リリアナ?リリアナ、どうしたの?』

「うーん、ちょっと気になる事があってね。あっ、精霊さん、風で髪を乾かしてくれないかしら?」

『はいってもいいの?』

可愛らしい精霊達に、ざわついていた気持ちも落ち着いてくる。

「お願いします」

クスクスと笑いながら精霊達とおしゃべりしていると、部屋の扉をノックされた。

「お嬢様、お支度をお手伝いいたします」


ドロシーに髪をすいてもらい、話をした。

「ドロシーが急に辞めたのはなぜ?」

新しいお母様の使用人が来るからと、辞めて行ったとお父様には聞いていたけど。

「寂しかった、知っているメイドはコニアだけになってしまって・・・」


「お嬢様、私達も離れたくはなかったのですが、旦那様に辞めるか、こちらの御屋敷に来るかを選べと言われ、辞めるなら紹介状は書かないと・・・。こちらに来るしかありませんでした」


お父様が皆を連れて、私だけ置いて行ったんだ。今さらお父様はどうして私をこちらに連れてきたんだろう?大切な娘だって言ってくれたけど。



お父様はこのお屋敷でどんな風に新しい家族と過ごしたんだろう、私の事は忘れていたのだろうか?

第二王子の婚約者として王宮で教育を受けている時は、義母も義妹も私を居ない者としていたが、貴族としての生活はできた。婚約破棄されてからは、私は要らない者、王宮に呼ばれることもないと、手を出してきた。

傷や痛みは精霊が治してくれていたが、お父様は私がどんな扱いを受けていたか、知っていたのだろうか?



ベッドに横になり目を閉じた。



暫くして若いメイドが呼びに来てくれた。


執務室の前まで案内され、メイドが離れたので、扉をノックしようと近付くと、少しだけ扉が開いていることに気付いた。

中の話し声が聞こえてきた。


お父様とセレイル様の笑い声だ。

「これで、ドヘイド王国で爵位が持てるのですね」

「ああ、ウェズリ王太子殿下の婚約者の家だ、伯爵かそれ以上だろう」

ウェズリ王太子殿下の婚約者?

お父様とセレイル様は何を言っているのだろう?


「リリアナがこの国に来ないと言い出したりしないか、気が気ではなかったわ。でも、あの女が意外に役に立ちましたわね、フフフッ」


「第二王子の婚家になるからと、メリアの実家から相当金を出させたからな。婚約破棄になった時はどうなるかと思ったが、ドヘイド王国のウェズリ王太子殿下から婚姻の申込みがあるとは、ハハハッ、もっと早くリリアナを連れてくればよかった」

「これで、社交界にも出られるわ。ドレスや宝石を買っても、誰にも見せつけられなくてはつまらないですもの、フフフッ。それに、病弱なあの子とずっと屋敷の中にいて、気が狂いそうでしたわ」

「うむ、ジェンリーは後継ぎには不向きだ、次の後継ぎでもつくるか?なぁ」

「まぁ、旦那様、ウフフフ」


2人の話は聞くに耐え難い内容だった。

(これがお父様達の本音なのね・・・酷い、私だけではなくジェンリーのことまで)

まだ会っていないが、病気だという弟のことが気になった。

落ち着いて、まだ、ダメ、関係ない人まで巻き込んでしまう!

大きく息を吸い込み、吐き出す。

(2人の思い通りになんてさせない!)

怒りを静め、震える手で執務室をノックした。


「失礼いたします、お父様」


「おぉ、来たか。入りなさい」

上機嫌なお父様の返事に、静かに扉を開けて中に入った。




お父様がクズでした。

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