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朝のご挨拶に伺うと、ウェズリ殿下は既に執務室でお仕事をされていました。
扉を開け中に通してくれた、近衛のライトニング様の私を見る目がおかしい。ウェズリ殿下の側近のデレク様も、申し訳なさそうに私を見ている。
(?何かしら)
「おはようございます、ウェズリ殿下」
「おはよう、リリアナ良く眠れた?」
ウェズリ殿下の笑顔がいつにもましてキラキラしている。
とても御機嫌のご様子。
「はい、ありがとうございます、ウェズリ殿下もお顔の色もよろしいようで」
「ああ、リリアナに吉報があるんだ、こちらへ」
ウェズリ殿下が机から離れソファーへと移動し、私の手をとり隣に座らせた。
相変わらず距離感が近い。
「陛下にお許しを頂いたよ、今日にでも部屋を移ろう」
部屋を移る?どこに?なぜ?
訳がわからずにデレク様を見ると、申し訳なさそうな顔して私を見ている。
「リリアナ様、今朝、ウェズリ殿下が陛下からお許しを賜り、婚姻の儀を3か月後に変更いたしました。それに伴い、御部屋を王太子宮殿へと移られることになりました」
王太子宮殿は王太子夫婦の宮殿、結婚後に移動する予定の宮殿。
しかも婚姻の儀を3か月後?それは可能なの?
「来賓を招いての結婚式は半年後になりますが、先ずは婚姻を結び御夫婦に成られます、その後王太子宮殿に入られる予定です」
「その前に移っても問題ないだろう」
ウェズリ殿下、それはちょっと、結婚前に夫婦の部屋で過ごすことは戸惑います。
「大有りです、3か月ぐらい待てないのですか。御部屋を整え御二人に快適に過ごして頂ける様、手配致します、それからです」
ドキドキしながら、ウェズリ殿下とデレク様のやり取りの行方を見守っていると、精霊が肩や膝に降りてきた。
『リリアナ、リリアナ、ちいさなおひめさまが、けんかしてる』
『おはな、リリアナとそだてたおはなをとったの!』
『だめなの!』
「小さなお姫様?お花?」
ちょっと怒っている精霊もいる、何かあったのだろう。
「ん?精霊達が騒いでいるね、どうした?」
精霊が側に来たのでウェズリ殿下も気になったのだろう
「リリアナ、挨拶はいいから」
「ウェズリ殿下、申し訳ございません、お仕事のお邪魔になりますでしょうから、お暇致します」
「ああ、ではまた食事の時にでも、話そう」
「はい。」
執務室を後にして、精霊の後に付いていった。
「リリアナ様、どちらへ?」
「何だか精霊が騒いでいるの。たぶん中庭だと思うのだけど」
私付きの2人の侍女は護衛も兼ねていて、すぐさま、サブリアが私の手前にまわり、もう一人のスリミナが辺りを確認しなが中庭に先導してくれた。
「!?これは!」
前を行くメイドが私の前に手を出して止まらせた。
「あぁ、遅かった……」
2人の女の子がずぶ濡れになり、喚いている。その周りをメイド達が為す術なくオロオロしていた。
あと、少しです、お付き合い下さい。