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それから私とジェンリーは速やかに屋敷を後にした。
妃教育と社交界デビュー教育の為と称して、王太子殿下が話を通して下さった。
父はジェンリーまで連れていくことに渋っていたが、王太子殿下には逆らえず渋々承諾したようだ。
私はドヘイド王国の王族、大臣、神官に貴族と覚える事が山のようにあった。
ジェンリーは最高の家庭教師の元、今まで施されてこなかった貴族たる、領主たる教育を受けている。勉強がとても楽しいと生き生きしている。
そんなジェンリーの周りには精霊達がいた。
ジェンリーの剣の鍛練を眺めていると、 『ジェンリーのくろいの、まだあるよ、ぜんぶとっちゃう?』精霊が話しかけてきた。
精霊の示す先に目を凝らせば、ジェンリーの胸の辺りに黒い靄の様なものが、確かに見える。
時折、咳き込んで苦しそうな姿を目にすることもあった。
「全部取れるの?ジェンリーの黒い靄を全部取ってお願い。」
精霊達がジェンリーの周りに集まると、キラキラと光の粒の様に輝いて見える。ジェンリーも何かを感じたのか、自身の身体を眺めていた。
「お姉さま・・・」
顔を上げ私を見つめ、柔らかくお日様のような暖かな笑顔を見せてくれた。
(ジェンリーにも分かったのかしら)
駆け寄り私の前で跪くと、恭しく手を差し出してきた。そっと手を重ねると、静かに指先にキスが落とされた。
「お姉さまは女神様です。今まで何をしていても、生きているだけで辛く苦しかった僕に光を見せてくれた。お姉さまが来てくれたから、僕は生きていられるのです。」
その目には涙がたまって今にも溢れそうだった。
そっとハンカチを頬に添える。
「生まれ変わったジェンリーに私からプレゼントです」
翼を広げた鷹の刺繍を施したハンカチ、これから大きく羽ばたくあなたに。
誤字脱字ありがとうございます。




