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私には護るものができた。まだ幼いジェンリー。王族と下手に関われば、また同じことが起こらないとも限らない。
同じ轍を踏むことだけは避けなければ。
「身に余るお話ではございますが、わたくし・・・」
「知らないようだが、君を側室にとの話が出ているそうだよ」
話を途中で止められ、口を開けたまま固まってしまった。王太子殿下の仰った内容に耳を疑う。
目の前を精霊が通ったことにより、我に返り、思わず王太子殿下に聞き返してしまった。
「あの…? どなたが、どなたの側室……でございますか?」
「リリアナ・ヘイワード嬢。君が、レイナード第二王子、いや、今はレイナード王太子か。彼の側室候補として上がっている」
第二王子殿下が王太子? では、第一王子殿下は? あのパーティーの後、私がワイズフォルト国を出てたったの2日しか経っていないのに、王宮ではいったい何が起きているのだろう。
「第一王子は我が国に婚約者の家族と共に亡命している。愛し子が二人、その上あのパーティーでの騒ぎでリリアナ嬢の義妹を担ぎ出して派閥が出来てしまったんだ。第一王子の婚約者は命を狙われ危険な状況だったので、家族共々亡命してきたのだ。リリアナ嬢と同じだね」
「それと、私が側室になるお話と、何の関わりがあるのでしょうか」
「王になるはずの第一王子が国を出て、未熟な第二王子が立太子した。しかし王妃となるには教育、知性が足りない愛し子たち……。そこで大臣たちは考えた。王族に入る予定だったリリアナ嬢を側室に据え、本来国妃がする仕事をさせ、愛し子はお飾りの正妃に据え、国民や諸外国に精霊の加護を見せ付ければ良いと」
私を簡単に排除したくせに、また、私を利用しよういうの?
「・・・」
もう、あの国に戻るつもりはない、私はジェンリーを護る。
「私はワイズフォルト国から不要と破棄された者です、今さら戻るつもりもごさいません」
側室、ルミナと夫を共有するなんて! マリエヌやメリアのいる所にも二度と戻りたくない。
「それに、弟のジェンリーを・・・」
「そうそう、ドヘイド王国でのヘイワード家の爵位だが、伯爵だ。領地はここより東になるかな」
またしても王太子に言葉を遮られた。
「王太子殿下、婚約のお話は謹んで御断りさせていただきます。ですので、父への爵位を賜わることはお受けしかねます」
王太子殿下に阻まれる前に一気にお話をした。
「ドヘイド王国でのヘイワード伯爵はジェンリーだよ。申し訳ないがリリアナの父親には爵位もだが領地も任せられない。それに君に対する仕打も私は許すつもりはない」
最後は強い口調になっていたが、カップを手にとりひと口飲み、元の柔らかな口調に戻っていた。
「だが、まだ幼いため此方から後見人を付けさせてもらう、ジョエル・フォスター大公だ。リリアナ」
「・・・はい・・・」
「ジェンリーの事は心配しないで。私はリリアナとリリアナの大切な者達を護る。その権利を私にくれないか」
強く握っていた両手を王太子殿下は優しく開かせてくれた、掌には強く握りしめていたせいで爪の跡があった。
包まれたその手を見て、この温かい手を信じてみようと静かにお返事をした
「はい、身に余る光栄にございます」




