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少し修正追加いたしました。
「リリアナ、王宮より婚約破棄の書簡が届いた」
久しぶりに会えたお父様、こんなに顔色が悪いのはこの書簡のせいなのですね。
お父様の声が僅かに震えている。
ヘイワード侯爵家長女の私はワイズフォルト国第二王子レイナード様の婚約者。10才の時に婚約者になって8年間、お互いに愛ではないが幼馴染み、友人としてお互いに厳しい王子、妃教育の合間を見付けては二人で励まし慰め合っていた、少なくとも私は信頼を置ける相手として過ごしてきた。
一ヶ月前のこと、私は体調を崩して臥せっていた。
お見舞のため、レイナード第二王子が来てくれた、何故か同じ日に友人のルミナ・セリオド伯爵令嬢がやって来た。王子が来ることは先触れがあったため解っていたが、ルミナは突然やってきた。
後で解ったことだが、ルミナのメイドに我が家のメイドがレイナード様が来訪することを話していた。そのメイドは王子にお茶を出すことを自慢していただけのつもりだった。ルミナは最後まで偶然だった、私を心配しての事だと話していた。
その日は約束の時間よりも早くレイナード様が到着されて居ることを誰も報せてくれず、私はベッドに横になっていた。
窓の外でふわふわと小さなかわいらしい精霊たちが私を呼んでいるので、窓に近づくと、庭を案内する義妹のマリエヌとなぜか一緒についてまわるルミナがいた。
小さな精霊たちが窓を開けてみてと話しかけてくるので、窓を開けてみると、庭からマリエヌの声が聞こえてきた。
「殿下、此方へいらしてください、私の育てたお花をみてください」
庭の花は全部私が世話をしてますけど、マリエヌの花なんてあったかしら。
窓から顔を出すと空からというか、精霊たちが、キラキラ光と氷の結晶を降らせて見せてくれた。
『リリアナおみまい、きれいでしょう』
(ええ、とても綺麗だわ。ありがとう)
その時、中庭ではマリエヌとルミナの上に光の粒と氷の結晶が降りそそいでいた。
ルミナのメイドが「ルミナお嬢様に精霊の祝福が!お嬢様は愛し子様です!」と大声を上げた。
「違うわ!この祝福は私のよ!」マリエヌまで大声を上げる。
確かに本で読んだ精霊の祝福の様だった。
2人の様子を唖然と見ている王子と側近たち。その中の一人が急ぎ王宮に伝達に走っていってしまった。
部屋からその様子を見ていた私は、大変なことになったと青ざめた。
王や大臣たちはその連絡を受け、第一王子、第二王子共に婚約者がいたが、婚約破棄をして新たに愛し子と思われる2人を婚約者にという声が上がった。愛し子を他国に取られないためだ。
第一王子は婚約は破棄しない、王位継承は返還すると突っぱねた。第一王子とその婚約者は誰が見ても相思相愛、二人を離すことは酷なこと、まず本人達が拒絶した。
しかし、第二王子は此を期に自分が王位第一継承者になれると、私との婚約を破棄し、新たに婚約者を愛し子から選ぶこと望んだ。
「あっさり婚約破棄かぁ・・・私の8年間って何だったのかしらね、8年って長いわよね」
『リリアナ、リリアナどうしたの?かなしいの?いたいの?』
窓の外から心配してくれている。
精霊が見える人もいると言うことにだが、私の周りには見える人はいないようだ。人がいる時は部屋に入ってこないようにお願いしている。精霊が近くにいると、どうしても精霊に目が向いて気になってしまうから。
目の前にハンカチが差し出された。
「お顔を・・・」
メイドのコニアに渡された。
顔にそっと手を当てると、自分が泣いていることに気づいた。
ぽつん、ぽつんと空から雨が降ってきて、窓を濡らす。
(大丈夫よ。お願い、雨を止めて)
窓の外を見つめる。
「空が泣いております、リリアナ様は何も悪くありません、全ては王様と第二王子様です。ですが、手の掛かる王子様から解放され、厳しいお妃教育も失くなったとお考えになられてはいかがでしょう、それに、これからは素敵なお方と恋をすることも出来ますね」
コニアが温かいお茶を淹れてくれる。
外は雨が上がって日が射している。
そうね。面倒事から解放され、少しは自由になれるかしら。
あーお茶が美味しい。
読んでいただきありがとうございます。