4 アオイ・リーゼンバーグ・2
ブックマークありがとうございます。
会議があったようだが、頭痛を理由に教官宿舎の自宅に戻って、「落ち着こう、私!」を実行していた私は、3杯目の紅茶を飲み干した。
思い出すもの、身の回りのもの、すべてが
みんな大好き、乙女ゲーム転生小説実写版!
舞台化!2・5次元俳優集合!
的な。
好きだけど。そうよ、池袋のお店まで行って、生写真買ったりしたわよ。彼にとっては、黒歴史かもしれないけど。今じゃミュージカルでも活躍中の押しは、テ○○ュ出身でー仮○○○ダーにも出てたしー、
いや、今は置いておこう?
ね、私。
私の本棚のDVDコレクションとか、写真集とか、どうなるのかなー、私死んだんだし。
死んだのよね。この展開のルールからいくと。
死んで転生したんだわ。
ノンフィクションだなんて、誰も言ってくれなかったけど。
本当にお花畑の薄っぺらい、しかしながらゴージャスで胸キュンで、ご都合主義にリアリズムと夢と希望と友情と、女の情念と、フォーマットと、その他諸々をぶっこんだ世界が構築されているんだ!
とりあえず。
アオイ=碧は、生きている。
存在するのだ。
(ー教師、29歳、という『設定』は同じなのよね。)
出自も半生も、まったく異なりはするものの。
そして、最も肝心なことは!
(・・・誰の作品?)
そう、私は、この世界を舞台とした話を読んでいない!!!!!
アズーナ王国
王院学院
しらんがな!
いや、アオイとしては、知ってるよ?ああ、ややこしいな。でも、神埼碧は、こんな王国知らんがな!
普通、知ってる物語に転生するんじゃないのか?そしてつり目を鏡でみて、わあーあくやくれいじょおだあーてんせいしちまったあー的になるんじゃないのか。
閑話休題
紅茶ポットを傾けてカップに最後のお茶を注ぐ。
転生者としてのアドバンテージは、私にはないと言うことだ。
しかも、このストーリィにおいて、アオイがどういうポジションかもわからない。
これから、どんな出来事があり、そしてアオイがどうなっていくのかも、わからないのだ。
つまり
ご都合よく立ち回り、この世界で幸せをつかむことなど、自らあたりくじを宝くじ売り場でひく位、無理がある。
(で、あれば・・・)
アオイとして動きつつ、この世界に慣れていくしかない。
アオイとして、生きていくしかない。
(神埼碧の29年が、役に立てばいいけど)
とりあえず、アオイが紅茶好きではなく、コーヒー党だったらいいのに、と思うのであった。
窓の外はすっかり日が暮れた。
カーテンを閉めようと立ち上がったその時
RRRRRRRRRRRRRR
え
電話があるんだ(あるんです)
「はい、リーゼンバーグ」
(ーお休みのところすまないね。シトです)
「・・・・・・校長先生。本日は申し訳ありません」
(いや。あのね、それはね、そのー)
「ー何か?」
(うん。ちょっと大きなね。君のクラスの。)
いまから、来てくれる?という声を聞きつつ、背中に冷や汗がわいてきた。
年休とった時に限って!というアレである。
すぐに!と電話を切って仕事着に着替える。
ーこのときは、前世の経験上、けんかとか非行とか、そんな呼び出しだと思っていた碧である。
だが、この世界で、アオイの物語が進行し始めたことを今はまだ知らない。
やっとで話が進みます。