入院生活。
私、今をときめく(?)十五歳!
スケートリンクで頭を打って、もう一年を超える入院生活続行中!
さあ、今日も楽しいこと、あるかな?
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「……………。」
……どうしてこうなった……。
体が悲鳴を上げている。隣のお兄さんは私を励ましている。
体はすこしも動かない。まだお兄さんは私を応援している。
ここはどこなんだろう。
いつまでそうしていただろうか。
だんだんと思い出してきた。
体はいまだに動かない。
様々な坂や棒が無尽に張り巡らされているこの空間で、私は立っている。
ああ、体が痛い。
「ここは……じごk――」
「ほら、がんばれ!」
爽やかな声。
What is your name?(アナタノ名前ナンデスカ?)
「僕? 僕は――そうだね、カイトでいいよ。」
「カイトカイトカイトカイトカイ都会都会都会都会都会都会都会――」
「ちょ、それ『都会』になってる。」
「……。」
故意にやりました。
すみません。投げやりな気分になってまして。
動けないのがストレスでストレスで。
いやー、私はどうなるんだろうな。
そしてここはどこなんだ?
何故こんなところにいる?
疑問は増すばかりだ。
そしてなぜ彼は『聞きしに勝る事実』みたいな顔をしているのだ?
「……『開いた口が塞がらない』というのは、まさにこのことか。」カイトと名乗る男は空を仰いで。「君は本当に自覚がないんだね。独り言だと思っていたことが相手にすべて伝わっていたら羞恥に苛まれるろうに。美也子さんに聞いていたことがそのままに現実のものとなるとは。」
そうか、みゃーこはこのことを、この人にあらかじめ伝えていたのか。
え、なに?
どういう関係?え、ちょ。
「考えていることが筒抜けって……。君は嘘が付けなさそうだね。」
「いや、嘘はつきますよ。」
「……どこからが心の声で、どこまでが台詞なんだか良く分からない人だな……。」
あ、そうだった。
思い出してきた。
私がすべきこと。
確か、私は――。
「『アイドルにスカウトされて現在修行中』、とか?」
「違います。そんな訳はありません。」
わざわざ冷たく言い放つ必要ないじゃん。
ひどいなぁ、私は忘れっぽい性格なのに。
バカになったんだよ、頭打って。
てことで、私がバカなのは仕方ないの!
「何を言ってるんですか。声に出てますよ。」
「あれれ?」
「じゃあ言いますよ。今あなたがここに居る理由は、『リハビリをするため』です。早く歩けるようになりましょうね。」
「地獄だ……!」
「何か言いましたか? あなたのような人はまだ健康なうちなんですよ? ちょっと頑張ればすぐ歩けるようになるというのにあなたはそれさえも放棄するというのですか? 歩きたくとも、走りたくとも、それができない人がごまんといるというのに? ふざけないでくれませんか? バカにするのもいい加減にしなさい? 自分何様なんですか?ちょっと待ってよく考えてはつg――」
「すみませんごめんなさい浅はかで軽率な発言を皆様に向かってお詫びいたします本当に申し訳ありませんでした言い訳の余地もなくこちらの悪いことでありまして、文字通り弁明の余地もありませんごめんなさい私は幸せ者です良き友人と素晴らしい指導者の下これからも誠心誠意リハビリに励みます雑念の一切を払い、清き心を保つよう不断の努力を継続しどのようなときも自分の良心に従って物事をよく考え自らの意思で周りに流されるだけの人間ではないようにし――」
美也子は入り口でため息をついた。
「調子を見に来てみたけど……何かの宗教みたいになってるわね。カイトさん本人には悪いけど――彼は解雇ね。」
自分でいうのもなんだけれど、なんだこれ。
【次回予告】(予定:変更の可能性大)
久々の登校日! わーい!(白目) zZZ……