心の準備がぁ!
私、今をときめく(見た目)十八歳!
ついに魔王城前まで来たよ!
さあ、ここからどう攻め滅ぼしてやろうか……。
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「……………。」
……どうしてこうなった……。
ちょ、聞いてない! まって、ユーリィ!
三人は、魔王城の地下の通路を通っていた。
一列にならない通れないような狭い通路。
明かりはちゃんとある。
「こんな抜け道があったなんて、すごい! すごいよみゃーこ!」
私は完全に幼い子供のようにはしゃいでいた。
まあ、中身は子供なんだけれど。
……見た目は大人、頭脳は子供、その名はロリコンオタク久留美!
「ちょっと、静かにしてください。声が漏れては居場所がばれてしまいます。」
すかさず、ユーリィがたしなめる。
ユーリィ談だが、潜水艦というものは音を極力出さないために床をカーペットにしたり、包丁を使うときも静かにしたりするそうだ。
今はその話、関係ないけれど。
「とはいえ、どうしてこんなところに地下通路があるんでしょうかねぇ、みゃーこ先生。」
「そうね。罪人とか捕虜といった類のものは地下通路で移動させた方が、二方だけ守ればいいから脱走しにくくなるんじゃないかしら。その点、地上だと四方八方に散り散りになられたらひとたまりもないわよね。この世界の人々はどんな技能を持っているか分かったもんじゃないから、手錠を外されたんじゃ困るんでしょう、多分。」
なるほど、ずいぶんとこじつけっぽいけれど言わんとしていることは分かった。
要するに守りやすいんだな、こっちの方が。
まあ、私だったら足に枷を付けて宙ぶらりんにして運ぶのは楽しそうとか精神病質者っぽいことを思いついちゃうけれども。
自分がされて嫌なことは人にはしない。コレ大事。もう散々に破っているけれど。
そんなことをつらつらと考えていたら、出口が見えてきた。
ついでに道幅も広くなり、三人が横一列に並んでも余裕があるほどだ。
ユーリィの指示で物陰に隠れる。
「静かにしていてください。ちょっと見てきます。」
精神面で一番年長者であるとともに、強さも最高のユーリィが偵察に行く。
まあ、今までの戦闘を見てきたからがっつりと信用させてもらっている。
さすがに多対一の戦いは無理があるだろうけれども、私たちが加勢しても足手まといになるくらいには強い。
数分たった。
ユーリィ、帰ってこないな。
おそい。
「みゃーこ、ちょっと行ってみようか。」
不安に駆られた私は、みゃーこに小声で話しかける。
対するみゃーこは、自身の口元に指をあてる、「静かに」というジェスチャーしか返しては来なかった。
静かにしていてくれとは言われたけどさ、ちょっとならいいでしょ。
正しいのはみゃーこなんだけどさ・
ま、ユーリィは最強だし、問題ないだろう。
そんなことをつらつらと考えつつ、自分の思考をポジティブに保っていたところ、ユーリィが満面の絵意味で帰ってきた。
「うちの村の人間はすべて見つかりました。」
私たちの間に安堵する空気が流れる。
先ほどまで張りつめて言った緊張は何処へ行ったのやら。
「これから外まで誘導しようと思うのですが、ご協力いただけますか?」
間髪入れずに了承した私たちの顔を見ると、とっても嬉しそうに笑ったので、ついつい頭をなでてしまった。
ユーリィのとろんとした目。
あー、私ってなんて幸せなんだろう。
あー、あー、あー……。
「久留美、そこらへんにしておきなさい。」
みゃーこの声ではっと我に返る。
ユーリィの髪の毛はぼさぼさに、機嫌は最悪になっていた。
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数分後、私たちは村人たちが入っている牢屋の鍵を開けた。
ちなみに、魔王軍たちの屍は後ろの方でうずたかく積み上げられ、布がかぶせられ、ついでに消臭されている。
「それにしても、どうやって連れ帰るの?」
ふとした疑問をユーリィに投げかける。
つーん、とそっぽを向いたままだが、答えてくれた。
「もうめんどくさいので、移転魔法でみんな一度に別の、新しく村を作ろうと思っていた候補地に飛びます。そしたらお別れですね。」
ふんふん、ツンデレかぁ。
あれ、今なんて言ったんだろう。
聞いていなかった。どうしよう。
みゃーこの手腕の良さもあって、てきぱきと作業は進み、すぐに候補地に移ることが出来た。
ユーリィも多少ぎこちなさは残るものの、また村という集団に受け入れてもらえそうだ。
「というわけで、久留美さん、美也子さん、お元気で。本当にありがとうございました。」
という言葉と共に、私たちは薄暗い魔王城地下に送り返された。
え!? ちょっ、聞いてない!
そんなわけで、残るは私たちの魔王城攻略だけになったのであった。
エタっていたのに、何食わぬ顔で戻ってくる作者ァ……。
○ねぇ!




