れっつごーとぅーまおーじょー
私、今をときめく(見た目)十八歳!
ユーリィの無双っぷりに、う、羨んだりしてないんだからね!
本当だからね! 羨ましくないったら羨ましくないんだから!
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「……………。」
……どうしてこうなった……。
まあ、深く考えないようにしよう。
頭がおかしくなりそうだ。
一つだけ言えることがある。
オイテカナイデェエエエ!!!
私たちは、魔王城への道のりをてくてくと歩いていた。
ちょうど今は森の中。あと少しで魔王城に到着する。
「ねえ、久留美。」
「ん? なんだい、ばあさんや。」
どこっ。
鈍器で殴ったような鈍い音が響く。
「みゃーこお姉さま、何でございましょうか?」
「次は無いと思え――どうして、私たちは歩いているのかしら? 空を飛んだ方が絶対に早いと思うのだけれど。」
私は、思い切り殴られた頭を抱えながら答えた。
「ほら、魔王を倒したら本格的に女神さまを探してイジメてそれから地球に帰るっていう見通しをもってここまで来たでしょ? ユーリィと会える最後だなあと思って。」
「なるほどね。良く分からないけど分かったわ。要するに、最後だから少しでも長く愛でていたいってわけね。」
合法だもん、こんないいことないよ~。
着せ替えから始めたいろんなことを嫌な顔一つせず受け入れてくれるんだもん。
「それに、空飛ぶと熱いんだもん。」
「それは久留美の技術が足りていないだけだと思います。それと、いい加減離れてください。」
私の腕の中でユーリィが不満そうな声を上げる。
きゃーっ! この顔もいい! いい! あと、一度でいいから踏まれたい!
「私が全力で踏みつけたら、今の身体能力のレベルでも頭砕け散りますよ。」
……やっぱり、遠慮しておこうかな。記憶が無くなったらいやだし。あのオウジサマみたいにはなりたくない。
「そういえば、あのオウジサマはどうなったんだろう。」
そう私が一言呟くと、すぐに答えが返ってきた。
「ああ、あの人がいた国はとっても善良な国になったわよ。今は現在の王様が、『バカ息子の記憶が無くなった! これはまずい!』と召喚術のやり方を記したこの世界でただ一枚の紙を燃したわ。おかげで解析できなくなったわよ。女神さまの情報にはそこだけ文章を黒く染められていたし。ちなみに、今は『小さい国家』を目指して頑張っているらしいわ。王子様が発案して、主権所有者自体が持つ権力を少なくすると言った意味合いで頑張っているらしいわ。」
……長い。長いよみゃーこ。
私にはちんぷんかんぷんだったけど、多分いい話なんだね。国民にとって。
その時、私の腕の中にいる、湯たんぽみたいに温かいユーリィが言った。
「見えてきましたよ、魔王城。」
「ぬくい……。」
私は、胸のあたりにあるユーリィの髪に顔をうずめる。
「あの、久留美さん? あれ、魔王城ですよ。」
「ずっとこうしていたい……。」
ユーリィが近くでしゃべっている……幸せ。
「聞いてます?」
「ああ、耳が溶ける、直結した脳が煮崩れる……。」
他所から見たら完全に不審者の表情。
「……ふんっ!」
「ぐほぅッ!?」
肘をみぞおちに突き上げられるこの感覚。
子供ユーリィとはいえ、凄まじい威力。
そして後方に吹き飛ばされ、樹に頭を強く打ち付ける。
「あいたたた。」
「……わあ、すごいなー。あの目にもとまらぬ速度から樹にぶつかったというのに、怪我一つ負っていないよー。石頭かー。計算外だなー。」
ユーリィの冷たい棒読みに心が痛む。
……めっちゃ怪我してますよ!? みぞおちとか! みぞおちとか!
「ほら、バカみたいなことやってないで、さっさと行くわよ。あの久留美みたいになっちゃだめだからね。」
「はい。心得ております。」
あれ? 私は? 私はぁあああッ?
オイテカナイデ! オネガイ、ウゴケナイノ! イマワタシ、ウゴケナイノ!
「さ、手でもつなごっか。」
「はい。」
やめて、やめてぇえええ! 何でそんなにうれしそうなの、ユーリィ!
ユーリィから汚物を見る時の視線を感じている! ちょっとうれしい!
そのあと、助けてもらいましたとさ。
短くてすみません。




