正体見たり
私、今を時めく(見た目)十八歳!
一日たったら昨日のことなんか忘れちゃってるの!
何か大切なことについて考えていた気がするけど、ま、いっか!
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「……………。」
……どうしてこうなった……。
やめておいた方がよかったのかもしれない。
まさか、こんなことだったとは。
「? どうしました、クルミさん。」
「い、いや、なんでもないよ。」
ユーリィは首を傾げ、ならいいや、というような表情をしてからみゃーこのところに向かった。
まずい。顔に出てたな、絶対。
かがみ、っと。
うわぁ、酷い顔。真面目にひきつった笑みじゃん。
さぁて、みゃーこはなにをしているのかな?
ヒュッ。
「……………………………。」
ズドッ。
え?
何が起こった?
廊下の曲がり角からちょっと顔を出そうとしただけなのに。
まさか、
「すみません。」
「うわっ。」
「ほんとにすみません。何かやましい考えを持った人が近づいてくると、勝手に体が動いちゃうものでして。」
結界のフィルターからは、私、みゃーこ、ユーリィの三人を除外している。
目の前にいるのはユーリィ。そしてこの子は――。
「本当に大丈夫ですか? 今日は様子がおかしいですよ? 顔色もよろしくないですし。」
「は、ははは。大丈夫、大丈夫。」
まずい、本当に疑われてしまっている。
このままだと非常にまずい。
よし、魔法を使おう。
「―――――。」
あ、異常状態解除の魔法をかけたら治った。気分がよくなった。
なになに……? おお、恐怖状態にかかっていたらしい。
いやぁ、まさかこうなるとはねぇ。
精神値ってどれくらいだっけ。
え? いや、ちょっとまって。
5!? え、5!?
いやぁ~、ありえないわぁ~。
まぁでも、ユーリィの相手をしていたら仕方がないか。
こうもなるよね。うん、うん。
「……本当に、本当に大丈夫ですか?」
いやぁ、かわいいなぁ。
頭なでなで。
スカッ。
おや?
「大丈夫そうですね。では、これで失礼します。のぞきは二度としないでください。あと、やるなら大胆に。」
よけられてしまった。
レッツ、かがみタイム!
うわお。悪魔の笑みじゃんか。
そりゃびっくりもするよね。
なにせ、口裂け女みたいになってるもん。
私、口裂け女じゃないからね!
とりあえず、回復しとこ。S“ピーッ”N値。
……ところで、みゃーこたちは何をしているのだろう。
私をさしおいて。
大胆に!
スライディング! からのジャンプ! そして変わり身の術! おまけに輪ゴムでっぽう八十一連発!
「今のをすべてよけるとは……なかなかやりますね。」
「ふっ。こっちだって伊達に中二病やってないんでね。」
「ちゅう……ナンデスカ?」
「この間にさっと後ろに回り込む!」
「相手を油断させて、肘鉄!」
「あまい! 必殺技、ハグ!」
「あ、なんもない。」
「ふざっけんな! わるかったな、丸いもんついてなくってよぉ!」
「久留美が、泣き崩れたことにより、ユーリィの勝ち……っていうか、何やってんの? あんたたち。」
みゃーこが勝敗を告げる。
「私たちは、互いの力を高めあおうと、模擬戦をやっておりましたッ。」
「それにしては、ユーリィ、あなた、銃やら刀やら出しすぎじゃない? どこからもらってきたのよ、それ。あと、いつから始まってたのよ。」
「武器の類は久留美さんから配給されました。始まったのは、頭をなでられそうになった時です。頭をなでたくば、大量のハンデを与えながら私に勝ってみてよ、とアイコンタクトで伝えました。」
「久留美は、それをわかっていたの?」
すべて真実で、仕方ないので、私は肯定の声を上げた。
みゃーこが私をつつきながら辛辣な言葉を浴びせてくる。
「つまり、久留美さんは一番気にしていると言ってもいいことをいわれて、今落ち込んでいるっていう事ね。」
「はい、その通りです。」
「そして? 今後当分の頭なでなでを拒否されたってわけね。」
「面目ないです。」
「ついでに、ユーリィの評価もがた落ちってわけ。」
「反論のしようがありません。」
と、そこで、ユーリィがそっぽを向きながら、
「あの輪ゴムでっぽう九十一連発の作り方を教えてくだされば、頭なでなでだろうとハグだろうとなんだって受け入れますよ?」
「え!? 本当に?」
「滅多な事が無い限り、私はうそをつきません。」
「やったー! 教えるよ!」
こうして、私たちは仲良くなった。
とある国の、王様の娘と。




