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偉大な勇者は魔王であろう仮説  作者: 忌むべき13
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不穏の種

デュラハン討伐から数日が経った

久しぶりに普通の朝日を拝むことが幸せに感じた

ここ最近ディアにとってとても忙しい日々が続いた

デュラハン討伐により、国王から直々に城への出頭命令

負傷したラーナのお見舞い

ラーナに関してギルドメンバーへの報告

いろいろと面倒事が重なっていた

だからこの日はディアにとって久しい休暇なのだ

「そういえばウィンリィは無事なのかな…」

思ったことがつい声に出てしまっていたようだ

「主、ウィンリィというのは誰なのですか?」

興味深々な猫

「お前には関係ないよ」

疲れていたため無表情で突っ返した

「まあ後で主の脳に直接入り込めば分かるので話さなくともいいんですけどね」

そうだ、こいつは俺の脳に入り込めた

なんとも面倒な猫だ

「あ、ああ、綺麗な人だったよ、優しくて強くて、そんでもって勇敢だった」

焦った俺は咄嗟(とっさ)に出た単語でどうにか応えた

「そうなのですな」

今度は逆に興味のないような口調だった

「なんだよ興味ないのかよ」


「いえいえそんな事ありませんよ」


「まあ、もう会う事もないだろうしいいんだけどさ」

会う事もない、は少し違った

会えないの方が正しい

「なんと…お察しします」

と神妙な顔

「いやいやいや死んだとか、殺されたとかそんな不謹慎なもんじゃないよ?」

焦って誤解を解こうとする

「と、申しますと?」


「あの日、災厄が襲ってきた日から行方不明なんだ」


「なるほど、そういうことだったのですね」

猫にこんなに話をしてしまうなんて俺も精神的に末期なのかもしれない

「あ、そういえば」

いきなり声を出してしまった

「なんでしょうか?」


「俺の得意魔法『覇』について聞かせてくれないか?」

前から気になっていたことだ

「かなり唐突ですね良いですよ」

猫は流暢続けた

「この世界には主に『大地』『天空』『海洋』『暗黒』『閃光』の5種の魔属性で構成されています。」

このことは知っていた

常識の中の常識だ

「ここでは『覇』は曖昧な立ち位置にあり…」


「ん?どういう事だ?」

話の途中に割入ってしまった

「まあまあ話を聞いてください」

猫に諭されているみたいだ

「この能力は『暗黒』と『閃光』のどちらにもなり得ます。悪徳に使うものなら『暗黒』に、善行に使うのならば『閃光』になります。」

なるほど

「要するにその能力を持つ人間の思考によって属性が変わるんだな」


「正解です。しかし主は曖昧な思考をお持ちなので今の『覇』は不安定な状態にあるのです」

曖昧とは失礼な

「主は時にネガティブな思考を抱きます。そうなればそれは現実と化します。言ってしまえば戦闘で負傷したラーナは主の『覇』の能力の被害者となります」

猫はこちらを睨みつけた

「それじゃ俺が人殺しみたいじゃないか!!」

つい声を張り上げてしまった

「天魔王を制した者が何を仰るか」

そうだった

この猫は第七天魔王の一人である事を忘れかけていた

そして俺はこの猫を飼い慣らしていた

「そしてもう一つ!」

もやっとした空気に喝が入った

「『覇』は思考を形にする能力と他に『他属魔法を支配する能力』もあるのです」

まるで陰読みで言われた通り魔王になるルートじゃないか

「試したいので少し開けた場所へ行きましょう」


「あ、ああ、分かった」

自身の抑えきれない好奇心をこれまで恨んだことは無い


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

暫く猫と無言のまま歩き続けた

そして開けた荒地へと辿り着いた

「ここら辺にしましょう」

猫は足を止めた

「ここで何をするんだ?」


「まあ言う通りにしてください」

いつも通りの命令していく感じだ

「まず底のない空洞を想像してください」

目を閉じながら唱えた

(底無し…底無し)

「はっ!!」

目を開けるとそこは光一つない暗闇にいた

「成功です主!!」

俺はいったい何が起こっているのか整理がつかない

「ここで内にあるものを放出するイメージをしてください」

この前やった感じなのは分かる

しかしとてもやりづらい

「そのままです!!やっちゃってください!!」

ある程度出すことは出来た

すると体に異変が生じた

黒よりも黒く、闇よりも暗い翼と腕が生えはじめていた

「そうですこれです!!」

なんなんだこの禍々しいものは

「これらの能力はデュラハンの創り出す空間魔法『ナイトメイスペース』と自身強化の魔法『闇の具現化(ダークリアリティ)』です!」

こんなことまで出来るのかこの能力は

なんだか自信がついた気がする

しかしすぐに周りがどんどん崩れて、翼や腕も無くなっていた

「な、なんで崩れ始めたんだ?」

焦りが顔に出る

「完全に習得するまではあまり使えないんですよ」

やはり簡単には使えないようだ

「これはデュラハンのオリジナルなので完全に習得するのは至難の業なんです」


「オリジナルじゃなければすぐにでも使いこなせる様になるのか?」


「ええ、簡単なものならすぐにでも」

やはりオリジナルを習得するには時間がかかるらしい

簡単なものから覚えていくしかないようだ

「さて、じゃあそろそろ宿に戻りましょう」


「ああ、そうしよう」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ギルド集会所にて】

「ギルド『サルバドール』に所属する皆に告げる!!!」

大衆を前にして一人の男が声を荒らげる

副マスターの『プロト』だ

「ギルドマスターのラーナは今負傷している事は知っているな!」

彼の声は地を響かせる程の轟音

「それがどうしたんだ!!」

一人の男が声を上げた

「その件だが、あの場にギルドマスターと共にいたのは誰か知っているか!」

全員がざわついた

皆がひとりの男について語っていた

「そう!!怒れる者(クラスティア)を宿した悪魔!!『ディア』である!!ラーナはこいつと二人きりだった!!」

皆、その男が何を言いたいのかなんとなく把握することが出来た

「だが!それは我らが『ディア』に対して畏れて同行しなかったのが悪いんじゃないか!?」

先と同じ男がまた声を上げる

「お前はあの悪魔側に着くつもりなのか?」

プロトが睨みつけた

それにつられて大衆の半数が睨みつけた

「い、いや、そうじゃないが…」

男が続ける間も与えずプロトは声を張り上げる

「これから第七天魔王の一人!!『魔王ディア』をこのギルドの討伐対象とする!!」

一瞬大衆に戸惑いが見えた

しかしプロトの一喝で皆一斉に賛同の声を上げた


このことはギルドマスターのラーナは知らずに一人広い病室でただ寝ていた

まるであの時に立ち止まるように

まるでその時に取り残されたかのように

そしてこの時に追いつけぬように


ピー!!!

やけにうるさい機械音が病棟に響き渡る

「Z棟807室『ラーナ・グロティリア』の容態が悪化しました!」


「早く魔法医(重荷魔術師の資格とは別に魔法医の資格を取った者を指す)と魔魂(魔法物質によって構成された人工魂の事)の手配を!!」

静かな深夜の病棟が一気に騒々しくなった

「ヒール!!」「ヒール!!」

魔法医が必死に治癒魔法をかけている

「だめだ…心拍数がどんどん減っている…」

諦めずに魔法医は魔法をかけ続けた

「道を開けろ!」

魔魂が到着した

「プロート!!」

魔法医の移植の魔法だ

ラーナの古い魂が丁寧に取り出される

「なっ…なんだこれは…」


「うがぁっ!」「キャー!!」「や、やめてくれ!!」

病棟は血と死体で溢れかえった

深夜の病棟からは人の姿は消え元の静けさが帰ってきた


「マダ…タリナ…イィギギジヂヂヂギ」

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