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偉大な勇者は魔王であろう仮説  作者: 忌むべき13
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悪夢の受託者

僅かに差す陽の光で目が覚めてしまった。

「んっ、朝か」

違う、明らかに夜だ、

夜の暗闇の1面に大きな炎が揺らいでいる

「な、なんだこれ!?」

中にはウィンリィに似た女もいた、しかし彼女ではない、確かに違う


(おい)


ああ、この危機の中で幻聴を聞いてしまうまでになってしまったのか


(おい、目を覚ませ!!)

うるさい声が頭を響く


「はっ」


「やっと起きたか」

目の前に映るのは見覚えのある、いやギルドマスターのラーナだ

「たしか今日は近くの魔窟で訓練でしたよね」


「ああ」

「さあ出発だ、早く支度しろ」

なんだか本当の冒険者気分だ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それではこれから訓練を始める!!」

ラーナの一声で角笛と漢の声が響き渡った


「よお、俺がお前のタッグチームの『フィル』だ」

容姿はよく見るガタイのいい戦士のようだ


「俺の得意魔法は『岩』!!己を硬め、敵を砕く!」

「かっこいいだろ?」

とても歯が眩しい


「次!フィル、ディアチーム!魔窟へ入れ」


「はい!!」

息が揃った


そしてフィルと俺は魔窟の奥へと足を進めた


魔窟の中はとても冷ややかだ

足元もしっとりしていて、今にも転びそうだ


「魔窟に入るのは初めてか?」


「いえ、昔父に連れられて……」

言葉を言いかけたところに魔物が現れた


「おっと話の途中すまない、お出ましだ」

剣を構える、俺も一応構えだけはしておく

身長約2メートル近くのケンタウロスだ

先にフィルが向かった


「硬化!!」「鋭化!!」「斬!!」

一瞬にしてケンタウロスは粉々となった

「どうよ?」

満面のドヤ顔だ

しかしフィルのドヤ顔だけは何故か許せた

と、安心する間もなく次の波がきた

30体ばかりのアンデットだ、

一体ここはどんな作りをしているのだ?

「アンデットか……」

と悩ましい表情


「どうかしたんですか?」


「あ、まあなんでもない!心配ありがとうな!」


「斬!!」「斬!!」「斬!!」

野太い声とアンデットナイトの唸り声だけが響く

しかしアンデットに物理は効いているのか?


(俺もなにか使えれば…)

そう思った矢先だった

「うがぁっ」

フィルが負傷してしまった

一刻も早くアンデットをどうにかしないと…


ーーーそんなとき眩い光が脳裏を走った


「うっ…」

なにか全身に強い圧力をかけられているみたいだ

段々と圧力は強くなってゆく

限界ど

なにかがぷつんと音を立てて内にあるものが放出された

「アアアアアア!!」

あの時の感覚だ、災厄を倒そうと、ウィンリィを救おうとした時と同じだ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(大丈夫か……!!)


(大丈夫なのか……!!)

遠くから聞こえるフィルの声で覚まされた


「俺は…一体…」


「お前!!あの数のアンデットとアンデットロードを倒すなんて凄いな!!」

勿論記憶は無い、身に覚えがない、だが褒められている


「いや、あの、僕がやったわけじゃ…」


「お前本当は『勇者』なんじゃねぇの!!」

話が全く通じていない、ましてや根拠の無い冗談まで飛び出た


コツコツ……

魔窟の上の方から誰かが近づいてきた

「ほう、我以外に『勇者候補』がいるとはな…」

聞き覚えがない声だ

「すまない、私は第五階級魔術師『マゼル』と言う」

如何にも魔術師の容姿だ

黒いフード付きのロングコート

腰に据えた短剣と魔導書らしき本

「勇者と聞こえてしまいつい、ね」

マゼルはイヤミ顔で続けた

「まあ、こんなのがなれる訳ないだろうから安心だ…」

典型的な嫌な奴だ


「行くぞディア、こいつの相手をするだけ無駄だ」


「は、はい…」

フィルに連れられ先へと向かう

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

フィルが満足したあたりで俺らは出口へと戻った


ガヤガヤガヤ…

なにか揉め事でも起きたのか、


「この魔窟は第五階級魔術師のマゼル様が買収した、直ちに撤退せよ、繰り返す、直ちに撤退せよ」

そこにはマゼルを含めた黒ずくめの男が3人程

「立ち退かないというのならば殺傷命令もでている」


「おうおうおう、どうしたどうした」

ギルドマスターのラーナだ

「なんだお前は」


「俺はラーナ、このギルド『サルバドール』を統べる者であり第四階級魔術師の資格を持つ」


「ほう、第四階級…」

俺には階級だとかなんだとかよく理解できない


「マゼル、と言ったか」


「ああ、そうだとも」


「もしもそれが国からの命令なら立ち退いてやろう、だがもし隣国、また第七天魔王が関わっていたとするなら…」


「するなら?」


「ここで淘汰する」


「なるほどォ」

とても嘲るようなな笑いと共にラーナの首筋に短剣をたてた

「ここで引くなら仲間の命は助けてやんよ…」


今にも戦いの火蓋が下ろされようとしているというのに突発的な頭痛に襲われた

(なるほどねェ、そいつの後ろにゃ天魔王が付いてるな)

聞き覚えがあった声だ

どこからだ……どこから聞こえているんだろうか


「お、おいディア…なんだその眼…」

フィルの怯えたような声が聞こえる


「え…?」


「お、おいあの灼熱のように燃える眼は…!!」

大衆がざわめき始めた


怒れる者(クラスティア)じゃねぇか!?」

どこかで聞いたことが…


(さあ我に身を委ねよ!!幼き器よ!!)

とても強い頭痛と共に声が聞こえた


「「だれがお前なんかに!!もう二度と!!」」


目の前が一瞬歪んだ

それと共に体中が熱い

なにかが体の中心から湧き出てくる


「な、なんだあれは!!!」

先程まで嘲る表情だったマゼル

マゼルに対して敵意むき出しのラーナ

魔窟買収に腹を立てていたギルドメンバー

その場の全ての人間が畏れた


「なんだよ…これ…」


ディアは律した、制してしまった

あの第七天魔王『怒れる者(クラスティア)』を…


(くっ、我を律してしまうとは、我も器を見誤ったようだ)

聞こえた、今度は明確に、耳の、頭の中から

頭痛もない

もう頭は冴えきっている


(仕方ない…さあ、我が主よ、我が少しばかり力添えをしよう)


(まずはマゼルという奴の眉間を弓を放つように狙え)

言う通りにしてみた

矢を引くように右手を後方へを引いた

そうすると焔が具現化した

ひたすら紅く

ひたすら美しかった


(今だ!撃て!)

焔に見とれていたが、掛け声とともに矢を放つ

矢は真っ直ぐマゼルの眉間へと向かう


「バリアフィールド!!!」

さすがに怯んでいたマゼルも漏れ出してている殺気に気付いたらしく即座に守りの体制に入っていた


(やはり…)

(今の守り、そいつの中には『強欲たる者(グリティアヌス)』が内に潜んでいる!)

そうか、第七天魔王がバックにいたのか


(よしディア!次で決めるぞ!内にある力を右腕に込めろ!!)

また言う通りにした

するべきだと確信した


掌からとても熱いものを憶えた

今にも爆発しそうだ


(掌をあいつに向けろ!)

掌から焔が放たれた

それは真紅のように紅く

閃光のように眩く

雷鳴のように轟いた


「バ、バリアフィール…ドッ……うがぁ!!」

焔はマゼルとその連れに見事に命中した

マゼルが散ると共に黒い瘴気が周囲に舞った


(カティア…お前も廃れたもんだな…少し眠れ)

今度は違う声が外から響いた

視界が揺らぎ気を失った

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(起きろ主!!お!き!ろ!)

喧しい声とともに目を覚ました

目覚めた時には揺れる馬車の上だった

「体が痛いな…」


「おう、ディア、目覚めたか!大丈夫だったか?いきなり強くなったと思ったら突然倒れて」


俺は倒れてしまったのか

「あのとき俺は……」

知らぬ女の名を聞いた

その後の記憶はあまりない


「やっと目じゃめたか我が主たる者よ!!」

なんだこの赤い染料に何日か漬けたような紅い猫は

「何なんですかラーナさん…この生き物は…」


「あれ、お前の仕獣じゃないのか?」

ラーナも知らないようだ


「そう!我こそは!主であるディア様にお仕えする仕獣!『カティア』である!!」

カティア…どこかで聞いたが覚えがある


と考えていると

(お前が制した者だ、怒れる者(クラスティア)だ)

脳に直接話かけることが出来るようだ

そして思い出した

微かな記憶だが目が眩んでいる間に確かに紅い猫を見た

しかしこんな肩に乗るようねコンパクトなサイズじゃなかった

もっと大きな…とても迫力のある猫だったはずだ

(仕獣になったからか…?)

(それともオレが制したからか…?)

いろいろと思考を巡らせたが結局良い結論には至らなかった

猫にいろいろ聞こうとしたが俺が考えているうちにもうすやすや寝ていた


「まあ考えていても無駄だ、今は依頼が来ている」

なんの話だろうか?

「ディアが第五階級魔術師を自称したランクAの災厄を消滅させたことにより、国家から報酬の良い依頼が来ている」

マゼルは災厄だったのか

人形なんて初めて見た

「この先にある魔城には『デュラハン』を始めとするアンデットが蔓延っているという話だ」

良い報酬にはそれほどの難易度が付きまとうのはあたりまえか

「そこでだな、ギルメンと相談した結果、俺ら二人だけで討伐することになった☆」

???

頭がはてなマークで溢れた

「なんで俺ら二人なんですか?」


「みんなディアの能力を恐れてしまってな」

さすがにそうだ

第七天魔王の力を前にして普通にしていられるこいつの方が凄い


「てことで、宜しくな!ディア!」


「は、はい」

二人で大丈夫なのだろうか

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ラーナと俺は魔城についた

早速中から大量の低ランク災厄が出てきた

「さあ、早速スケルトンナイトのお出ましだ!!」

ラーナの号令と共に俺も戦闘態勢に入る

やはりまだ体が慣れていない

ラーナがバタバタと敵を倒す間に俺はちまちまと雑魚を摘むように倒していった


「よし、ひと通り片付いたな」

ラーナの額には汗か見えた

なんとなく申し訳ない気持ちで溢れた


「さあ、深層に向かうぞ!」

あとに続いて行った

しかしなんだろうかこの胸騒ぎは

慣れない力を使っているせいなのか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ラーナは俺が手を出す前に敵を軽々と倒していった

そして難なく最深階層にたどり着いた


「俺の古城も人間の侵略を簡単になってしまっとはな…」

奥からドスの効いた低い声が響き渡ってきた


「構えろ…」

ラーナがこれまでに無い真剣な顔をしていた

ガチャン…ガチャン…

鎧が蠢く音が近づいてくる

「来るぞ…!!」

暗闇から突如いくつかの…いや数百の矢が飛んできた

「シャイニングシールド!!」

光り輝く壁が目の前に広がった

やっとこの最悪なタイミングで知るのことが出来た

ラーナの得意魔法は『煌』だ

デュラハンは『淵』の魔法を使う

このままじゃ押し切られる


「ぐっ…」

案の定すぐにこの勘は当たった

ラーナは俺を押し飛ばした

元いた場所は数百の矢によって起きた砂埃で見えない


「やれやれ、やはり人間はこんなものなのか」

先に聞いた声だ

そして声の主が姿を現す

身長約2メートル

ガタイはラーナの約1.5倍近く

全身を鎧で固め

兜の中からは黒い炎が立ち込めていた


「なっ…」

思わず腰が抜けてしまった


「さあ人間の子よ、手加減なしでかかってこい」

声とともに手に持つ巨大なメイスを振りかざした

流石に避けた

それ以外の選択肢はないと判断した

そしていまの攻撃で砂埃が晴れた

そこに見えたのは無数の矢の刺さっているラーナの姿だった

絶対絶命だった

(主よ!!)

カティアの声が聞こえる

多分脳に直接話しかけているのだろう

慣れというのは怖いものだ

(元々持つ得意魔法を使うのだ!!)

俺に得意属性なんてあるのか

(主は得意魔法『覇』を持っているのだ!!)

そんなこと聞いた覚えもない

使えた試しもない

(これから少し言う通りにしてほしい)

もうどちらが主なのか分からない

(目の前の敵を倒すまでの道筋をイメージしろ!)

イメージ出来っこないほど強い

そして俺はデュラハンと真正面から対峙するという非現実なイメージを抱かざるおえなかった

(イメージ出来たなら次はそれを実現できると確信しろ!)

出来るはずない

しかしここは戦場

勝てるに越したことは無い

(体に力を込めろ!)

「うぉぉおおお!!」

なんだか変だ

身体から黒い瘴気と金のオーラのようなものが溢れてきた

謎の自信が沸いてきた

やれる、今なら倒せる

漲る力を精一杯拳に込めた

「なぁっ……!?」

周辺に爆風が起こった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

確かにこの拳でデュラハンに攻撃を当てた感覚はあった

しかし見当たらない

デュラハンは木端微塵となっていた

周りに鎧の欠片が散ってる

「やりましたな!主!」

カティアがやってきた

「ギルドマ……ラーナは?」


「今医療班が到着して治療をしている」

よかった、助かっていた

「主もおつかれのようですし今日は宿に帰るとしましょう」


「そうだな」


この時俺はデュラハンを倒した事か今後更なる困難を呼ぶということはまだ知るよしもなかった

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