☆1
カタカタと揺れる窓。
テーブルの上のマグカップは、規則的な波紋をコーヒーに刻み。
崩れかけの砂糖みたいに、ザラザラとした音を立てる。
音の原因は、窓の外にある大きな機械群。
アクセサリーのように延長されたマフラーからは、大気汚染という言葉を油で溶いたような煙が流れ出ている。
スムーズに進んだかと思えば、時折酷くスローになり、そのたびに列が前へ、後ろへと歪んでいく。
自分で踏み固めた地面を、曳いた鋤で掘り返す様は、毎日眺めていても滑稽にしか思えない。
ならば、最初から踏み固めなければいいのに、と、直接伝えてやったことも何度かあった。
でも実際、滑稽でないことの方が、毎日の出来事の中では数少なく。
毎日というものは、滑稽の積み重ねで出来上がっていると言われたら、そうだね、と同意してもおかしくないだろうと返された。
決して平らだとは言えない地面を、機械群は進んでいく。
重量バランスをとるために後ろ側にまわされた砲塔が、自分の仕事の出来上がりを確認しているように見えて、事実、その近くには各種のセンサーが収められているのだから、今日の仕事はどうだったのか、ということを、仕事上がりに居酒屋で語るための情報収集はしているようだ。
ここに、彼らの活躍の場はない。
存分にその力を発揮したことの、後始末を、今、している。
柔らかくなった地面に、今度は遠くから榴弾で種を打ち込み。
花が枯れるころには、隣の区画へと移動する。
一年中、休むことなく。
走り続ける。
花を植える、ということの主目的は、つまりは汚染された土壌の改良のためで。
土壌を汚染したのは、ねっとりとしたタールと、それをまき散らした排気ガスと、その努力の結果まき散らされた放射能。
核爆弾なんてものを打ち込むよりも。
貫通力を向上させた劣化ウラン弾を使うだけで、そこら中がパーティー会場になった。
パーティーがお開きになって、もう十年以上。
主催者側に雇われて、ぼくはここで、こいつらと毎日を共にしているんだ。