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片翼のフォルスネーム  作者: 主音ここあ
第四章 それぞれの思惑とマギアスファウンテン
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第92話 新たな任務





メイベリーが皆の顔を見ながら


「それでは、新しい任務を説明します」




「任務の場所はドレアーク王国。内容は、ドレアークが何やら不審な動きをしている可能性があるので、その調査監視です」




「ええ!?」


思わず大声をあげるレオンハルト。

みんなが一斉にジロリと睨んだ。

ハッと気づき、レオンハルトは手で口を覆う。


ロベールがレオンハルトの横で、人差し指でトントンと机を鳴らした。

「しっかりしろよ。ここは特務部隊だって事を忘れるな」

「ご、ごめん・・・」



奥の方に座っていたクリスがぼそりと呟いた。

「特務部隊のお飾り王子は黙っとけよ」


「なっ――――!」


ガタッと椅子を鳴らして立ち上がろうとするレオンハルトを、ロベールが制した。

「言わせておけ」


「ロベール・・・」

レオンハルトは仕方なくそのまま座り直した。


そしてギリギリと歯噛みしてクリスを睨んだ。


(さっきのオーウェンの話しで、仲間思いのやつかと思ったけど、前言撤回だ!!)

(アラザスとの戦争の時、僕がその場にいた事を黙っていてくれているし、レンちゃんの言うとおりもしかして本当に『いい人』なのかと思ったけど勘違いだったよ・・・!)


当の本人は知らんぷりして頬杖をついていた。




そんなやり取りは気にせず、メイベリーは話しを続けていく。

「我々の部隊の一部が周辺各国へ定期的に偵察に行っている中で発覚した事だが、それを踏まえ、国王たち上層部の見解によると、ドレアークが水面下で何か不審な行動をしている、との事です。それが何かを探ってほしいと」


「不審な行動?」

別の隊員が訊いた。


メイベリーはうなづく。

「アラザスとの戦争に入る前からなのですが、一部の幹部が、王城と魔法研究所をひっきりなしに出入りしている様子。戦争が終わると更に増している。そして研究所の拡大。そして鉱石列車に積まれる鉱石の数が通常より大幅に増量されてゴールドローズから出荷されている」


(鉱石列車・・・そうか、レガリアを通過すると、次はドレアークに行くんだ・・・)

ぼんやりとレオンハルトは考えた。


列車は、ゴールドローズを始発に、ウィスタリア北部、そしてレガリア国南部の町、そして終着駅はドレアークの『魔法研究所』の近く。



レオンは空に地図を描く。

あの汽笛の音。

遠くから長い長い列車が走ってくる

そしてあっというまに前を通り抜ける。

風だけが、残される。





「それから、ドレアークのマギアスファウンテンと、研究所を夜な夜な往復する者たち、マギアスファウンテンに着くと、巨大な防御壁やら擬態魔法やらで何をしているか見えなくしている様子も何度か確認されました」



「ただの研究の一環では?」

また別の隊員が難しい顔をして聞いた。


メイベリーは苦笑いする。

「健全な研究だったらいいのですが、マギアスファウンテンまで話しに出てくるとなると厄介です。まことしやかに、研究所では『魔物』の研究もしていると、噂まで立っています――――」



「魔物だって!?」

部屋がざわついた。


「たしかに、アラザスとの戦争も、魔物が使われたと言われている。なにかしら魔物と関わりのあるとは思うが、研究――――?」


皆愕然としていた。


すると、別の隊員が声を荒げて言った。

「魔物は危険極まりない存在だ!そんな恐ろしいもの、即刻排除したいぐらいだ!」


(そんな・・・)

それを聞いてレオンハルトが急に立ち上がり、叫んだ。

「そんなことないよ!魔物の種類にも色々あるかもしれないじゃないか!」


「レオンハルト王子・・・?」

隊員皆がそれを見てポカンとした。


(や、やばい・・・)

思わず、オーウェンのベビーヘルファイアを思いだしてしまった。


「レオンハルト」

ロベールが厳しい顔でたしなめた。


「ごめん・・・」

小さく謝り、座った。




メイベリーが咳払いをひとつし、話を続けた。

「だから、調査する必要があるのです」


サミュエルが腕組みをして首をひねる。

「でも、同盟国ですよね?信頼できない、という事ですか?」


「勿論、信頼関係は築いている。しかしここ最近は腑に落ちない点が多いそうです。我々もドレアークに気づかれないよう、水面下で進めていく必要があります」


クリスが問う。

「一体、具体的に何をしていると考えられますかね」

メイベリーは首を横に振る。

「こればかりは入念に調べなければはっきりしませんが・・・。アラザスでも戦争をあっという間に終わらせた。だから、何か強い兵器を作っている可能性は高い。他国に知られずに―――そう、我が同盟国にも知られずに、ね」


クリスがそれに続ける。

「だからこそ、何か恐ろしい兵器でも作っているのではと」


ガレスがメイベリーの横で口を挟む。

「だから、調査の結果によっては同盟を切る事も考えられる」


「・・・」

(同盟を、切る)

とても複雑な感情だ。

ドレアークは父さんたちが言うように、同盟関係を続けていくのは戦力の面で良い。

しかし・・・。


「ドレアークも、以前の国王時に比べると、穏やかな政権になってきたと思っていたのだが、やはり根本は同じか・・・」

と、やや年配の隊員が言った。


すると、皆が口ぐちに話し出す。

「以前は、あちこちの小国を奪い、合併し続けていたからな。それであの大きな国になったのだ。まあ、一度半分に割れたが」


「もしもドレアークにバレたら大変だ。それこそ、怒り心頭で戦争に発展しかねない」


年配の隊員が言う。

「そうだ。憶測で物事をはかるものではない。国王も何を考えておられるのやら」



メイベリーが首をやんわりと首を横に振る。

「憶測ではありません。でなければ、一国の主が国の重要機関へ任務依頼しません」

「ふむ・・・」

一応皆が納得し、話がまた続けられた。




「まずは『魔法研究所』から調べます」

「『魔法研究所』・・・」

メイベリーの隣で書類を見ながらガレスが言った。

「表向きは魔法や魔鉱石の研究実験をしている・・・。しかし、さきほど隊長が言ったとおり、実情は何をしているのかわからない」




それを制すように、ガレスが声を大きくして言った。

「では、今回の任務の担当を発表する。サミュエル、クリス、マルタ、フレデリックだ」


「極秘任務ですので、よろしくお願いします。それ以外の人たちも、別の任務を継続してお願いします」


会議が終了し、それぞれの持ち場へ移動しはじめた。



(僕の名前は無い、か。ロベールが僕の出番は無いって言ってたのはこういう事か)

レオンが肩を落とす。

(そりゃ、隠密行動ともなれば、顔が割れてる僕じゃ無理なのは百も承知だけど)

でも。

(任務、やってみたいなー)

勿論、生半可な気持ちではない。

オーウェンからも特務部隊はなんたるかを耳が痛いほど聞いた。

(だからこそ)

僕の今の仕事は特務部隊なんだから、特務部隊員として、国のために働きたい。


ロベールが不思議そうな顔をしてレオンハルトを見た。

「―――なんだか顔つきが変わったな」

「へ?」

「いや、勘違いだったか」

そう言ってロベールは立ち上がり行ってしまった。

「?なんだよ、もー」





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