表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片翼のフォルスネーム  作者: 主音ここあ
第一章 レガリア国と最弱の王子
8/95

第8話 レガリア国 王立騎士団(3)

翌日。

早朝の騎士団宿舎。

ロベールは再びここへ来た。

直接部屋まで行ってみたがいなかった。

彼ならきっとこの時間でも来ているに違いない。

まじめで勤勉だからな。

彼の事は幼少時から知っているが、レオンハルトが怖がるほど怖い人物では無いと思う。

きちんとした道理があれば、受け入れてくれるはずだ。

まあ、曲がった事が大嫌い、というのは少し厄介かもしれないが。



ああ、いたいた。


「レイティアーズ」

ロベールが声をかけた。

レイティアーズが会議室の長テーブルの椅子に座っていた。

声をかけられた騎士団長は少し驚きの表情を見せる。

「どうした、ロベール。早いな」

「ああ、まあ」

少々歯切れが悪い。

どう切り出そうか。

「少し、話をね」

レイティアーズは長テーブルに書類をたくさん並べて難しい顔をしていた。

騎士団長ともなれば、色々な事をやらなければならない為、多忙を極める。

「忙しいならまたあとで」

ロベールは出て行こうとした。

「いや、大丈夫だ」

しかし、レイティアーズがロベールに席に着くよう促した。

ロベールは向いの席に座った。



レイティアーズが口を開く。

「そういえば、王子は、レオンハルト王子は大丈夫か?」

「え?ああ、そのことなんだが・・・」

レイティアーズの口からレオンハルトの話が出るとは思わなかったので、意表をつかれた形になってしまい、少々面食らう。

ロベールが話そうと思っていた事も、レオンハルトの事だからだ。


「どうしてそう思う?」

ロベールは訊いてみた。

レイティアーズは顔の前で手を組み、顎へ乗せた。

「いや、最後に話した時、少し元気が無いように思えたからだ。いつもの彼ではないような」

(わかってるじゃないか)

ロベールは少し安堵する。

「まさしくそうなんだよ。昨日の騎士団会議で色々思うところがあるみたいでね」

「会議で?」

「いや、直接本人から聞いたわけではないんだが」

と、前置きして、ロベールは地図の前のテーブルを見つめる。

昨日、そこに座っていた人物のことを思い出した。

「ギルベイル王子が、副団長に就いただろ」

「ああ」

「その就任なんだが、レオンハルトには知らされてなかったようだ」

「なんだって!?」

「いや、ギルベイル王子は直前になって決まったことだと言っていた。だから、知らないのもわかるが・・・」

「そうか、そんなことがあったのか・・・」

レイティアーズが厳しい顔になった。

「しかしそれは良くない。レオンハルト王子もれっきとした王子。失礼にあたるぞ。たとえ直前であろうとな。それは伝達ミスと呼べるのでは?」

(ああよかった。きちんと判断してくれるな)

レイティアーズに話して良かったとロベールは思った。

「国王の直属の部下たちが、こういった事は伝えるんだけどね・・・、僕のところにもその話が来なかったし、今後は間違いが無いよう僕も気を付けて確認してみるよ」

ロベール自身も反省の意を示しているようだが、いや、お前の責任では無い、とレイティアーズが否定した。



ロベールはテーブルの上で手を組んだ。

「レオンハルトは、兄三人とはあまり話をしない」

「そうなのか?!隊員たちとはよく話をするし、とても慕われているようだったが」

「あえて、話しかけない、というか・・・」

「?」

レイティアーズには初耳のことばかりで、まだ腑に落ちない。

「なにか負い目というか、自分は兄三人と比べて劣っていると卑下しているというか・・・」

レイティアーズは腕組みをして椅子の背にもたれた。

難しい顔をする。

「ふむ・・・、そんな風には見えんがな」

ロベールは苦笑した。

「そういうところがあるんだよ、レオンハルトは」

ロベールも、三人の兄との間柄の改善で、何か良い策が無いか考えるが、いつもレオンハルトが一方引いてしまう。

「しかし、一体何を卑下するというのだ」

ロベールは両手を大袈裟に上げる。

「僕にも理由はわからない。ただ、劣っているからと言うばかりで―――――」


レイティアーズは驚きを隠せない。

「お前たちのことは幼少時から知っているが、まさか、そんな事が起こっていたとは―――――」

ロベールは口角を吊り上げ笑った。

虚しささえ浮かぶ表情だ。



「しかし、いいのか?そういう個人的な、しかも王子という立場にあるものの、個人的な話をして」

ロベールは頷いた。

「勿論、レオンハルトの許可はとっていない」

「では―――――――」

「だが、騎士団のトップとしても、ゆゆしき問題ではないか?同じ組織に、あまり仲の良くないような二人がいる。しかもどちらも王族の王子」

「・・・・・・。ふっ、まあな」

レイティアーズが口角を吊り上げる。

そして続ける。

「―――――――しかしお前は、レオンハルトの心配をしているのか、この騎士団の心配をしているのか、よくわからんな」

「ははっ。どっちもだよ」

だって僕はレオンハルトの従者だぜ?と片目をつぶってみせた。





「そういえば、彼は自分が総司令官になると言っていたぞ?」

レイティアーズが思い出して言った。

「ああ。僕も最初噂で聞いた話だったんだが、本人もそんなかんじだし、でも、ほんとかよ?って思ってたけど、やっぱり違ってた」

十八歳で学校を出たばかりの新人が、たとえ王子であっても、いきなり総司令は無理だと思っていた。

「総司令官の話が勘違いだったと、それを知ったときの彼の心情は計り知れないな」

レイティアーズがため息をついた。

ロベールは頷く。

「普通の人間ならそうだな。レオンハルトはその気持ちを隠しているのかもしれないが」


はっと気づいてレイティアーズが言った。

「もしかして、国王も――――――」

ロベールは首を横に振った。

「いや、それに関してはよくわからない」

騎士団の役職の話しがどこまで通っていたのか、保護国へ行く話もしていたから、もしかして上手く情報が伝わらなかったのかも―――――――ロベールはそう言った。


ロベールはその役職の別の件に関しても、気になる事を話した。

「自分の兄が副団長という大きな役職に就いたが、自分は小隊の指揮官。その差に対しても複雑だったのかもしれない」

「ああ・・・。まあ、しかしこればかりは経験の差、年齢の差というものがある、仕方の無い事だ」

「まあね、これは自分で昇華していくしかないな」



レイティアーズは顎に右手を置き何か考えている。

「ギルベイル王子が今回騎士団に所属した事で、二人は同じ組織に入った。もしかして何か良い効果が生まれる可能性は無いだろうか」

ロベールはレイティアーズを見る。

「うん、そうだな。何か良い進展があればいいけど――――――」

弱く笑った。

「だからさ、よろしく頼むよ。騎士団長」

「――――――わかった」


「しかし、レオンハルト王子は良い従者を持ったな」

「ははっ、ありがとう」

ロベールは席を立った。

「忙しいのに話につきあってくれてありがとう」

「いや、また何かあったら言ってくれ」







****


――――――あ。兄さん、


待ってよ。



―――――いやだよ。お前はこんな魔法も使えないのかよ。


父さんも母さんも魔法を使うのが上手なのに、

なんで、お前だけ、


お前だけ、





どうして?

魔法を使えないと駄目なの?



ねえ、


兄さん―――――――――、





「兄さん!」

レオンハルトは目を覚ました。



一筋の涙が頬を伝って流れていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ