事件の犯人は・・・?
本日二話目投稿です。
俺が持ってきた報告書に目を通してゆく相樂さん。
「……ふぅ」
一息つくと、用紙から顔を上げて、俺たちを真剣な眼差しで見つめてくる。
「結論から言うとね、かなり厄介かもしれないよ?」
「どういう…」
「それって、やっぱりかなりの大物が裏にいるかもしれないってこと?」
俺の言葉に変態がかぶせてくる。
こいつこんなキャラだったか?
「うーん…それを言う前に、ちょっとこれを見てくれると助かるな」
そう言って相樂さんは、パソコンのキーボードの前まで移動する。
カタカタと迷いなくキーボードを打つ音を片耳で聞きながら、俺はぼうっと真正面にある八つの巨大なパソコンの画面を見つめる。
相樂さんの入力一つで画面に映し出される情報が刻々と変わる様は、何よりも相樂さんの手腕を物語っている。
ふと、相樂さんの手が止まった。
「相樂さん…?」
「どーした心の友よ?」
怪訝そうな俺たちの声にはっとしたのか、慌てた様子で相樂さんは両手を振った。
「あっはい!タイジョウブデス、ぜんぜん…だいじょうぶ、ですから。それよりも、あの画面を見てください」
全くもって大丈夫じゃなさそうだが、相樂さんの剣幕に押された俺たちは、彼女が指さす画面をおとなしく見ることにした。
「これは…」
そこに映っていたのは、小太りの中年の男。
今、世間を汚職問題で騒がせている政界の大物だ。
「名前を金成 秀夫。四十六歳、独身の政治家です」
「それと、この事件とどう関係があるんですか?」
「…これは、あるデパートの防犯カメラの映像です。映っていますよね?金成 秀夫と、被害者の四人の女性が」
見せられた映像には、確かに彼らの姿が映っていた。
「この写真にも、映っていますよね。多分、多分ですけど…被害者の女性は全員、金成の愛人だったのではないでしょうか。そもそも、フリータが…高級マンションに住めるはずないです。金成は、女性たちに貢いでいたのではないでしょうか…」
「そこ、私も引っかかってたんだよな~。なるほど、愛人だったか!でも、そーなるとさ?たまたま殺された女性が全員、金成の愛人でした~…なんて、都合が良すぎる話だよね?」
何かを含んだようなストーカーの言葉。
「じゃあ、真犯人が金成として…容疑者の山田は何なんだ?」
俺がそう言うと、二人から呆れた目で見られた。
「…なんだよ」
「啓司さん、恐らく山田は実行犯だろうよ」
ぽん、とストーカーに肩を優しく叩かれる。
こいつに同情された!?
今のこいつの俺を見る目、完全に可哀そうな子を見る目だったぞ。
普段手の付けようがないアホのくせに…。
「山田は貧乏だったから、女たちに貢ぐお金なんてなかったはずだよ。大方お金で釣られたんだろうけど。ほら、『殺してくれたらお金をあげよう。なあに、君の代わりの者を用意する。だから、君が犯罪者なる心配はない』とかなんとかお決まりの台詞を言ってさ。だから、わざわーざ見つかりやすい景信山に、これまた見つかりやすいように…一つの場所にまとめて四人分の死体を遺棄したのさ」
犯罪を隠すんじゃなくて、露見させるために、ね…そう言ってストーカーは笑った。
「私も、そう思います。けど、なぜ…四人もの女性を、殺す必要があったのでしょうか……?」
「だよねえ。無駄にマニーは持ってるんだから、ちょっとの事なら黙らせることぐらい出来るだろうに、それをしなかったってことは…よほど知られたくないものなんだろうねえ。殺さないと、安心できないくらいに」
「私の方でも少し調べてみますね」
「おうっ!よろしくなー友よ!君は私のベストフレンドよー!!あ、それとさ…ついでに頼まれてくれないかぃぃん?この、ステキな尻筋の、持ち主についてッ!!!」
ストーカーが、鼻息を荒くしながら一枚の写真を相樂さんに手渡した後、間髪入れずに両手を広げて、彼女に抱き着く。
「は、はぁ…なんか鳴竹さんって、顔かわいいのに残念ですよね…」
変態ストーカーの頭を撫でながら、困惑顔の相樂さんが呟く。
あなたも十分残念だと思うのは、俺だけだろうか?
「おい、相樂さんを巻き込むな。帰るぞ」
相樂さんに抱き着いて、迷惑をかけていた馬鹿の首根っこを掴む。
「そんなっ!私の天使―!!!」
「寝言は寝て言え。…それじゃあ、失礼します」
「あっ!尻筋の王子について、よろしくねー!…あぐっ!乙女に腹パンとは、容赦ない…」
腹を抑えてうめく変態の服を掴んで相樂さんから引き離す。
うん、やっぱお前はそういう奴だよな。
明日は更新できるか分かりません…。