相樂さん
「きっ来てくれたんですね!相馬様…っ」
いよいよ相樂さんの頬の赤みは、リンゴのように赤くなってきた。
いや、それよりも。
相馬様って、誰?
その疑問を口にするより先に、一人の人物が俺と相樂さんの間に割り込んできた。
「ちょっとまてぇい!私への謝罪はなしか!?謝罪ー!」
ストーカー…相変わらず回復早いな…。
相樂さんは一瞬きょとんとしたものの、思い出したというような表情で謝罪を口にする。
「…鳴竹 かぐやさんですね。えっと、すみませんでした?」
おい相樂さん自分がしたこと分かってないぞ。
「分かればよろしいのです!むふーっ…」
一方、ストーカーはというと満足そうな顔だ。
「お前はそれでいいのか…」
「それで~いいのだ~それで~いいのだ~!」
「天才バ○ボンか!それで相樂さん、俺の名前は松本 啓司です」
いまだバ○ボンの名台詞を口ずさんで、和服姿に下駄をはいた、常に路上をほうきで掃いているおじいさんの真似をしている馬鹿は放っておく。
「あっ…ごめんなさい。あ、あの、ですね。なにぶん、松本さんの声がっ!似ているんです!私の嫁である、相馬 弥刀きゅんにぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
ガッツポーズをしながら、相樂さんは叫んだ。
その叫びは、か弱い乙女のような、儚げな印象を受ける外見からは想像だにしないような雄叫びだ。
ほら、現に俺の前にいる変態も引いて…
「え!?もしかして、『毒花な君に調教を…』知ってるんですか!いいですよねあれ。最後は血涙を禁じ得なくてさ~」
「そうなんですよっ!結ばれない運命というのがまた……」
なかった。
なんだそれ。明らかにタイトルからしてヤバそうな感じが…。
「ちなみに聞くが何のアニメだ、それ?」
「「アニメじゃない(ですっ…)!」」
二人そろって反論してきた。
みっ…耳がっ…。
「いいですかっ!?『毒花な君に調教を…』、通称 毒調は十八禁BLゲームの中でも不朽の名作とまで言われる伝説のゲームで、はぁっ…はぁっ…主人公の毒舌のアメとムチ感がもう最高で、なのに受けとか…もう、もうっ…たまりませぇん…」
そんなに疲れるならゆっくり喋ればいいものを…。
しかもなんか恍惚としてるし…。
「はあっ…はあ…あ、あなたを襲えば…はあっ……生、ボイスでっ…わ、わた、私を…なじってくださぁい!(ハァハァ)」
鼻息を荒くしながら、じりじりと俺との距離を詰めてくる相樂さん。
なんだか肉食獣と対峙している気分になってきた。
「……ごめん無理。おい変態、この人は駄目だ、アウトだ。危ない。主に俺が…。別の人をあたろうな?」
「え~…やーだいててて!おっおううう…お願いだから足を踏まないで下さいぃぃぃ」
「いいな…私もやってほし……って!わ、わたし、なんてこと、言って…はずかしい………」
相樂さんは、急に赤面して手で顔を覆ったかと思えば、地面に座り込んでしまった。
それを見て、俺たちは顔を見合わせるしかなった。
迷の部屋にてー…
「ううう。すみません…。忘れてくださいいいい!」
ドン、と大きな音を立てて、迷さんが自らの頭をテーブルに打ち付ける。
「と、とりあえず頭をあげてください」
「そーだよ!上を向いていこう!」
「はい…」
おずおずと頭をあげる相樂さん。
とても整った、綺麗な顔だ。
中身がドМとか、凄く残念ではあるけれど、これはモテるだろうな。
「?何ですか…?わ、私、かわいくないので…」
見ても意味ないですよ、と相樂さんは力なく笑った。
確かに、どちらかというと相樂さんは美人よりだ。
「それに、この年で彼氏いない歴=年齢の喪女ですから…ハハッ」
「そんなことより、この人たちについて調べてほしいの」
「そんな、こと…はい。この…人たちですね。…分かりました。調べておきます」
地味に相樂さんに追い打ちをかける変態。
もうやめてあげろ。相樂さん今にも風化しそうだぞ。
「俺からも宜しくお願いします、相樂さん」
「おねがいしますっ!」
「おい、人にものを頼むときは頭を下げろ!」
「ぐえっ…ちょっタイムタイムそれ以上抑えられると…こっ腰が…」
「はあ?お前体硬すぎだろ」
「啓司さんに言われたかないわい!!」
「ふふっ…」
そんな俺たちのやり取りを見て、何を思ったのか笑いだす相樂さん。
訳が分からずストーカーと仲良く固まったのは言うまでもない。
個人的に相樂さんが気に入ってます