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白亜の騎士と癒しの乙女  作者: ゆきんこ
第一部

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叔父さん 3

 夕ごはんの後、アオイは紫色のドレスに着替え、先生の叔父さん――宰相さんが部屋に尋ねて来るのをソワソワとしながら待っていた。何で自分から行かないんだろうと思ったけど、アオイが挨拶に行くと、竜王様も一緒に行く事になる訳で。だから、先生に止められた。宰相さんがこっちに来てくれるからって。何気に、アオイってこのお城でかなり偉いんじゃ……。考えるのは止めよう。アオイはアオイだもん!


 部屋の扉がノックされ、私はアオイの返事を待ってから扉を開けた。すぐ目の前に一組の男女。この人達が宰相さん夫婦かぁ。


「こちらの、せ、席、どうぞ」


 アオイが引きつった顔で立ち上がり、対面のソファを示す。相当緊張してるらしい。それも仕方ない。だって、アオイは今日まで何も知らなかったんだもん。竜王様に叔父さんがいる事も、お城に戻って来る事も。心の準備、出来てないよね。


「失礼しますね」


 宰相さんが優雅にお辞儀をし、ソファの前に立った。奥さんもその隣に立っている。アオイが座らないから、宰相さん夫婦も座れないらしい。アオイ、早く座って!


「アオイ、座れ」


 竜王様がアオイの腕を引くと、アオイがストンと腰を下ろした。続いて宰相さん、奥さんがソファに腰を下ろす。先生が全員にお茶を出した後、部屋の中がシンと静まり返った。


 アオイから話さないと、誰も話せないのに……。改まった席では、招待した人から話し始めるのよって、母さん言ってたもん。この部屋に招待したのはアオイなんだけど、それ、分かってないのかな……? ハラハラとしながら成り行きを見守ってると、アオイが助けを求めるように竜王様を見た。すると、竜王様がクイッと顎をしゃくる。アオイはハッとしたように宰相さんに向き直り、口を開いた。


「カンザキ・アオイです。シュヴァ――竜王様にお世話になっています。不束者ですが、どうぞ宜しくお願いします」


 アオイ……。不束者って……。それじゃ、結婚の挨拶みたいだよ。ほら! 宰相さんと奥さん、お辞儀しながら笑ってるじゃない! もう! 恥ずかしいんだから!


「あ、あの――」


「失敬。予想外の挨拶だったもので。それに、今のシュヴァルツの顔――!」


 口を開きかけたアオイを手で制し、笑いを堪えながら宰相さんが口を開く。一拍遅れて顔を上げた奥さんも、一生懸命笑いを堪えてるのが一目で分かった。


「ブロイエと申します。以後、お見知り置きを」


 宰相さんは、ブロイエさんっていうのか。三十代後半くらいの見た目だ。でも! 魔人族は見た目で年を判断したら駄目。ブロイエさんは、物凄~いお年寄りのはずだ。だって、おとぎ話に出て来るような人だもん。


 ブロイエさんは、深い水の底みたいな色の紺色の髪を一つに括り、先生や竜王様と色違いの青い服を着ていた。目の色も、水の底みたいな紺色。宝石みたいでとっても綺麗。穏やかな顔つきは、どこか先生と似ている気がする。でもでも! 先生の方が格好良いもん。それに、ず~っと優しそうな顔してるもん!


「それにしても、シュヴァルツってば隅に置けないなぁ。こんな可愛い子、囲ってたなんてねぇ」


 ブロイエさんはニヤニヤとしながらそう言った。うん。笑い方も先生の方が優しくって好き。やっぱり、先生が一番だ!


「ブロイエの妻、ローザと申します。明日よりアオイ様の身の回りのお世話を手伝わせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します」


 ブロイエさんの奥さんはローザさんね。ふむふむ。ローザさんは宰相さんの服と同じような色の、青いドレスを着ていた。アオイが着てるのと同じ裾の長いドレスだけど、大きな胸を強調するように、大胆に胸元が開いているのがアオイと大違い。アオイ、胸無いからなぁ。ああいう胸の開いたドレスを着るのは、ローザさんみたいな人じゃないと似合わないと思う。


 ローザさんの髪の色は、母さんみたいな、赤毛に近い金髪だった。それを綺麗に結っている。濃いグリーンの目も、母さんによく似ていた。


 母さん……。今、どうしてる? 母さんは私が邪魔だった? 私、いらない子だった? でもね、先生が言ってたんだよ。私はいらない子じゃないんだって。私を必要としてくれる人がいるんだって。私はこの国の希望なんだって。だからね、私、一生懸命勉強して、治癒術師になるんだ。それで、先生の目、治してあげるの。たくさんの人の怪我とか病気とかも治してあげてるの。たくさんの人に必要とされる人になるの。そうしたら、母さん、褒めてくれる? いらない子じゃないよって言ってくれる? ねえ、母さん……。


「――私がお聞きした限り、現在、貴女様の身の回りのお世話をしているのは、そこの――」


 ローザさんが言葉を切り、私の方を見た。どことなく母さんに似てるローザさんをボーっと眺めていた私とバッチリ目が合う。私は慌てて頭を下げた。


「アイリスです」


「そう。アイリスちゃんとおっしゃるの。宜しくね。アオイ様のお世話をしているのは、アイリスちゃん、だけ、なのですよね?」


 ボーっとしてたの、気が付かれちゃったかな? しっかりしないと。私はアオイのメイドなんだから。アオイの恥にならないようにしないといけないんだから。こんな失敗、二度としなないように気を付けないと……。

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