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白亜の騎士と癒しの乙女  作者: ゆきんこ
第一部

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フランソワーズ 1

 男性陣三人と一緒にどこかに行っていたアオイが戻って来た。一人だけで。……おかしい。さっき、ラインヴァイス先生が呼びに行ったはずなのに。男性陣三人と先生は何処に?


「ただいまー。男性陣三人とラインヴァイスは戻ってくるの、ちょっと遅くなるから」


 アオイがそう言いながらテーブルに着く。すると、竜王様の眉間に皺が寄った。こ、怖っ! 怒ってる? 怒ってる?


「何があった」


「ヴォルフが失言して、ラインヴァイスに教育的指導を受けてる。ノイモーントとフォーゲルシメーレは一緒にいたからとばっちり。あはは~」


 竜王様の問いに答えたアオイが渇いた笑い声を上げる。失言って、ヴォルフさん、何言ったんだろう? 教育的指導って、何されてるんだろう? 気になる。


「愚か者どもめが……」


 竜王様が溜め息を吐き、椅子から立ち上がった。竜王様が呼びに行ってくれるのかな? このまま行かせて良いのかな? ……よしっ!


「あ、あの……」


 歩き始めた竜王様を呼び止める。すると、竜王様は足を止め、片眉を上げて私を見つめた。うう……。初めて自分から話し掛けるから、すごくドキドキする。でも! いつまでも竜王様を怖がってたら駄目なんだもん。きっと、竜王様は見た目に寄らず、良い人だもん。だって、ラインヴァイス先生のお兄さんだし、アオイの恋人だもん!


「私、行く……行きます。呼んできます」


「いや、私が行こう。アイリス、お前はここに残り、皆の給仕を」


 竜王様が片方の口の端を持ち上げ、ニヤリと笑った。竜王様の笑った顔は、ラインヴァイス先生と違って全然優しそうじゃない。でも、目元がほんのちょっとだけ、先生と似ている気がした。流石は兄弟。顔とか表情とかは全然似てないのに、よ~く見ると似てるところがあるんだもん。


「あれも、お前に見せたくない姿があるだろうからな」


 独り言のように竜王様がポツリと言い残し、スタスタと歩いて行ってしまった。見せたくない姿って何だ? もう一つの姿だったら、助けてもらった時に見てるしなぁ。う~む。


 水差しを手に、みんなを見て回る。飲み物チェック! アオイはまだお酒があるし、リリーとミーナもあんまり飲んでない。フランソワーズは……。あれぇ。もうコップが空っぽだ。ボトルも。新しいボトル、持って来ないと! 慌ててワゴンに戻り、新しいボトルを取り出すと、フランソワーズの元へ急いだ。


「ねえ、みんな。誰か良い人、いた?」


 アオイがそう問い掛ける。これ、わざわざ聞く意味、あるのかな? リリーはフォーゲルシメーレさんって答えるだろうし、ミーナはヴォルフさんって答えるだろうし……。あれ? そう言えば、フランソワーズはどうなんだろう? フランソワーズのグラスに新しいお酒を注ぎながら顔色を窺う。


「私はフォーゲルシメーレ様ですわ」


「私はヴォルフ様です」


 リリーとミーナは予想通りの答え。フランソワーズは、ノイモーントさんの事、どう思ってるのかな? アオイもそれが気になったのかな? ボトルをテーブルに置き、ワゴンへと戻りながら私は聞き耳を立てた。


「良い人と言ってもな……」


 フランソワーズがポツリと呟いた。その声はどこか困っているような感じで。もしかして、フランソワーズって男の人が苦手なのかな? 冒険者時代の話はよくしてくれたけど、男の人の話題って全然無かった気がするし。魔物に出くわした話とか、旅をしてて困った事とかしか話してなかった気がする。


「そもそも、私は男に興味が無い」


 フランソワーズってば、興味が無いって言い切っちゃったよ! 今までに好きになった人とかいなかったのかな? 気になった人とかいなかったのかな?


「何でです? フランソワーズなら引く手あまただったでしょう?」


 そう問い掛けたのはミーナだ。不思議そうに首を傾げ、フランソワーズを見つめていた。ミーナの気持ち、よく分かる。だって、フランソワーズって男の人の格好してるからか、キリッとして格好良いもん。それに、お風呂上がりに髪の毛下ろしてると、とっても綺麗なんだもん。女の人の格好させたら、とっても可愛い気がするもん。


「何でって……。男は臭い。それに汚い」


 むっ! フランソワーズってば失礼なッ! ラインヴァイス先生は男の人だけど、全然臭くないもん! とっても良い匂いするんだもん! 汚くだってないもん! いつも真っ白で、汚れなんて付いてないんだもん!


「臭くない男性もいらっしゃいますわよ?」


 そうだそうだ。リリーの言う通り! 良い事言った。思わずこくこく頷いてから、私はハッとなった。盗み聞きしてる事、気が付かれちゃう! 恐る恐るテーブルの方を窺うが、私が盗み聞きしていた事は、誰も気にしてないみたいだった。よ、良かったぁ。


「それに、頭の中はいかがわしい事ばかり……。冒険者時代、どれだけ不快な思いをした事」


「でもさ、そればっかりって事はないでしょ? 人には理性があるんだから」


 アオイが苦笑いをしながら問い掛ける。すると、フランソワーズは大きく溜め息を吐いた。


「理性、ねぇ……。アオイ、お前は花街って知ってるか?」


「花街……」


「ああ。男が金で女を買う店がたくさんある。少し大きな町には必ずあると言って良い。そこではなぁ、聖人君子みたいな顔をした男でも女を買うんだよ! 男なんて、金を払ってでも溜まったものを処理しなければ、理性なんて保てないんだ!」


 うむむ……。いかがわしい? 花街? お金で女を買う? 溜まったものの処理? フランソワーズの言ってる事がだんだん難しくなってきたぞ。後で、ラインヴァイス先生に聞いてみよっと。先生は何でも知ってるんだもん。きっと、フランソワーズの言ってる事の意味、分かるはずだもん。


「男なんて! 男なんて……!」


 フランソワーズは叫んだかと思うと、テーブルに伏せて泣き出した。それを見たアオイがフランソワーズの背中をさする。と、丁度その時、竜王様が先生と男性陣三人を連れて戻って来た。

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